貸付金・未収家賃・売掛金の相続税評価|回収不能として減額できるのはどんな場合か

個人間の貸付金や未収家賃、事業の売掛金は、元本に既経過利息を加えた額で評価します。債務者の破産・民事再生など回収不能が明らかな場合は減額できますが、単に返済が滞っている程度では認められません。判定の基準と資料を解説します。

亡くなった方が誰かにお金を貸していた、家賃が未収になっていた、個人事業の売掛金が残っていた、という場合、これらは「債権」として相続財産になります。貸した相手が親族や自分の会社でも同じです。評価の原則はシンプルですが、「回収できそうにない債権をどう扱うか」が実務の悩みどころです。

評価の原則

貸付金の評価額 = 元本の価額 + 課税時期までの既経過利息(未収の利息)

利息の定めがない貸付金は元本だけで評価します。未収家賃・売掛金は、課税時期に支払期日が到来している未収の金額で評価します。返済期限が先であっても、原則として割引はせず額面で評価します。

回収不能として減額できる場合

次のような事実があり、債権の全部または一部が回収できないことが明らかな場合は、その回収できない部分を元本に含めないことができます。

  • 債務者が手形交換所の取引停止処分を受けた
  • 債務者について会社更生・民事再生・破産などの手続きが開始された、または特別清算が開始された
  • 債務者が業績不振などで事業を廃止し、または6か月以上休業し、再開の見込みがない
  • 債権者集会の協議や和解などで切り捨てられる金額が決まった
  • 債務者の資産状況などから、上記に準じて回収不能が客観的に明らかである

ポイントは「明らか」という基準の厳しさです。「返してもらえそうにない」「連絡が取れない」「債務超過らしい」といった程度では、原則として減額は認められません。

計算例

亡くなった方が知人に500万円を年2%の利息で貸し、利息は年1回の後払い、前回の利払いから6か月経過して亡くなった場合。

  • 元本:500万円
  • 既経過利息:500万円 × 2% × 6/12 = 5万円
  • 評価額:505万円

この知人が課税時期の前に破産手続開始決定を受け、配当見込みがゼロなら、500万円は回収不能として評価額に含めないことができます(破産手続の資料が必要です)。

自分の会社への貸付金

経営者が自分の会社に貸している「役員借入金」は、会社の業績が悪くても、会社が存続している限り額面で評価されるのが原則です。会社が債務超過というだけでは減額できません。生前に債権放棄や資本への振替(DES)などで整理しておく対策が検討されます。

実務上の対応

貸付金は通帳の振込記録や借用書から把握します。相手が親族で「あげたつもり」の場合でも、借用書や返済の記録があれば貸付金として計上が必要です。逆に、贈与として扱われるには贈与の証拠が要ります。回収不能を主張する場合は、破産・再生手続の通知書、債務者の決算書、事業廃止の証明などを申告書に添付できるように準備してください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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