建物の相続税評価は「固定資産税評価額 × 1.0」が原則ですが、固定資産税評価額がそもそも付いていない建物や、建物の付属物があると、それだけでは計算できません。建築中に亡くなった場合、登記していない離れや倉庫、立派な門や庭園などが典型例です。
建築中の建物
課税時期(亡くなった日)に完成していない建物は、固定資産税評価額がありません。この場合は次の式で評価します。
評価額 = 費用現価 × 70%
費用現価とは、課税時期までにその建物に投じられた建築費用(材料費・工事費など)を、課税時期の価額に引き直したものです。実務では、工事の進捗割合に請負金額を掛けた金額を用いることが多いです。たとえば請負金額4,000万円の住宅が亡くなった時点で60%完成していれば、費用現価は2,400万円、評価額は2,400万円 × 70% = 1,680万円です。
このとき、支払い済みの着手金・中間金が費用現価を上回っていれば差額は「前払金」として財産に、下回っていれば差額は「未払金」として債務になります。
未登記建物・固定資産税評価額のない建物
登記されていない建物でも、市区町村が把握していれば固定資産税評価額が付いているので、課税明細書や名寄帳で確認します。どこにも評価額がない建物(増築部分や小屋など)は、次の方法で評価します。
評価額 =(再建築価額 − 建築時からの償却費相当額)× 70%
再建築価額は同じ建物を新築する場合の費用で、償却費は法定耐用年数に基づいて計算します。あるいは、市区町村に依頼して固定資産税評価額を付けてもらい、それを使う方法もあります。
附属設備の扱い
電気設備・ガス設備・給排水設備・衛生設備・エレベーターなど、建物と構造上一体になっている設備は、建物の固定資産税評価額に含まれているため別途評価しません。
一方、建物から独立した次のものは個別に評価します。
| 種類 | 評価方法 |
|---|---|
| 門・塀・外構 | (再建築価額 − 償却費相当額)× 70% |
| 庭園設備(庭木・庭石・池など) | 調達価額(同じものを課税時期に取得する価額)× 70% |
一般家庭の庭木程度であれば家庭用財産としてまとめて扱われることが多く、個別評価の対象になるのは高価な庭石や造園を施した庭園などです。
注意点
賃貸中の建物を建築途中で相続した場合、借家権の減額(30%)は完成して入居があってから適用されるため、建築中の建物には使えません。また、建築中の建物の評価や未払金の計上には、工事請負契約書、支払明細、工事の進捗を示す資料が必要です。亡くなった日の時点での状況を建築会社に書面で出してもらうと申告がスムーズです。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。