遺留分は「最低限の取り分」として知られていますが、実際に計算するには、どの財産を基礎に入れるかを正確に把握する必要があります。特に生前贈与をどこまで算入するかは、2019年7月の民法改正で期間が明確化されました。ここでは基礎財産の求め方と計算例を示します。
基礎財産の計算式
基礎財産=相続開始時の財産(遺贈を含む)+算入する生前贈与−債務
遺留分の額は、この基礎財産に総体的遺留分率(直系尊属のみが相続人なら3分の1、それ以外は2分の1)を掛け、さらに各自の法定相続分を掛けて求めます。兄弟姉妹には遺留分がありません。
算入する生前贈与の範囲
| 贈与の相手 | 算入する期間 |
|---|---|
| 相続人(特別受益に当たる贈与:婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与) | 相続開始前10年間 |
| 相続人以外 | 相続開始前1年間 |
| 当事者双方が遺留分を害することを知って行った贈与 | 期間の制限なし |
現在は10年で区切られたため、古い贈与は原則として算入されません。ただし「害することを知って」行った贈与は期間制限がないため、遺留分対策として駆け込みで贈与しても算入を免れない場合があります。
算入する財産の評価は、贈与の時点ではなく相続開始時の時価で行います。20年前に2,000万円で贈与した土地が相続開始時に4,000万円なら、4,000万円で算入します。相続税の生前贈与加算が「贈与時の価額」で行うのとは異なる点に注意が必要です。
計算例
相続人は長男と次男の2人、相続開始時の財産は6,000万円(全額を長男に相続させる遺言)、債務500万円、5年前に長男へ住宅資金1,500万円を贈与していたとします。
- 基礎財産:6,000万円+1,500万円−500万円=7,000万円
- 総体的遺留分:7,000万円×2分の1=3,500万円
- 次男の遺留分:3,500万円×2分の1(法定相続分)=1,750万円
- 次男が実際に取得した額:0円
- 遺留分侵害額:1,750万円
次男は長男に対し1,750万円を金銭で請求できます。長男への贈与が12年前であれば算入されず、基礎財産は5,500万円、次男の遺留分は1,375万円に下がります。
実務上の注意
遺留分の計算は民法上の時価で行い、相続税の評価額とは異なります。不動産の時価は査定や鑑定で把握する必要があり、相続人間で見解が分かれやすい部分です。遺言を作る側は、基礎財産を試算して遺留分を侵害しない分け方にするか、侵害する場合は生命保険などで支払原資を準備しておくことが、争いを防ぐ現実的な方法です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。