遺言の「相続させる」と「遺贈する」の違い|相続分の指定と分割方法の指定

遺言で相続人に財産を渡すときは「相続させる」と書くのが基本で、登記や預金の手続きが簡単になり、登録免許税も遺贈より低くなります。「遺贈する」との違い、相続分の指定と遺産分割方法の指定の区別、相続税への影響を整理します。

遺言書の文言で最も重要なのが、「相続させる」と書くか「遺贈する」と書くかです。相続人に財産を渡す場合、どちらの言葉でも財産は渡せますが、その後の登記・預金の手続きや税金の計算が変わります。結論として、相続人に対しては「相続させる」と書くのが原則で、相続人以外に渡すときは「遺贈する」としか書けません。

「相続させる」遺言は遺産分割方法の指定

「長男に自宅を相続させる」という遺言は、法律上「特定財産承継遺言」と呼ばれ、遺産分割方法の指定として扱われます。被相続人が亡くなった瞬間に、遺産分割協議を経ずにその財産が長男に帰属します。長男は単独で相続登記ができ、預金も原則として単独で払戻しを受けられます。

これとは別に、「長男に3分の2、次男に3分の1を相続させる」のように割合だけを決める遺言は「相続分の指定」です。この場合、どの財産を誰が取るかは別途、遺産分割協議で決める必要があります。相続人同士の話し合いを避けたいなら、割合ではなく財産を特定して書くことが大切です。

「遺贈する」との違い

遺贈は、遺言によって財産を無償で与える行為で、相手が相続人でも相続人以外でも使えます。相続人に対して「遺贈する」と書いた場合の主な違いは次のとおりです。

項目 相続させる 遺贈する
登記の申請 取得者が単独で申請 相続人への遺贈なら単独申請可(2023年4月以降)
不動産の登録免許税 評価額の0.4% 相続人なら0.4%、相続人以外は2%
農地の取得 許可不要 特定遺贈で相続人以外なら許可が必要
放棄の方法 相続放棄(家庭裁判所) 特定遺贈なら相手方への意思表示でいつでも可

税務上、相続人が取得する財産の相続税は、「相続させる」でも「遺贈する」でも同じ計算です。2割加算の有無も、取得者が誰か(配偶者・一親等の血族かどうか)で決まり、文言には左右されません。

文言の選び方

  • 相続人に特定の財産を渡す → 「相続させる」
  • 相続人に割合だけ決める → 「相続分を指定する」(分割協議が残ることを理解しておく)
  • 相続人以外(孫、子の配偶者、団体)に渡す → 「遺贈する」

古い遺言書では、相続人に対して「遺贈する」と書かれていることがあります。有効ではありますが、手続きが煩雑になったり、登録免許税の扱いで確認が必要になったりするため、公正証書遺言を作り直すことも検討する価値があります。遺言の文言は、相続税申告の際に税理士が最初に確認する項目でもあります。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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