事業用資産の買換え特例は相続人が引き継げる?取得費の引き継ぎと売却時の注意

親が事業用資産の買換え特例を使って取得した賃貸物件は、取得費が低く引き継がれるため、相続後に売ると譲渡所得が大きくなります。親が譲渡した年に亡くなり相続人が買換資産を取得した場合の扱い、特例の仕組みと相続人が確認すべき資料を解説します。

賃貸物件を長く経営してきた方の中には、所得税の「特定の事業用資産の買換え特例」を使って物件を入れ替えてきた方がいます。この特例は税金を免除するのではなく「繰り延べる」制度なので、相続人が物件を売るときに影響が出ます。相続の場面で何を確認すべきかを整理します。

買換え特例の仕組み

事業用(賃貸用を含む)の土地建物を売って、一定期間内に別の事業用資産を買い換えた場合、譲渡益の一部(原則80%、組み合わせによっては60〜75%)への課税を将来に繰り延べる制度です。繰り延べた分は、買い換えた資産の取得費を低く計算することで調整されます。

例:取得費1,000万円の土地を5,000万円で売り、5,000万円の賃貸ビルに買い換えた場合(80%繰延、譲渡費用は省略) 課税される譲渡益=(5,000万円−1,000万円)×20%=800万円 買い換えた賃貸ビルの取得費=5,000万円×20%+1,000万円×80%=1,800万円(簡略化した計算)

つまり、5,000万円で買ったビルの取得費が1,800万円として扱われます。

相続人への影響

相続人は被相続人の取得費をそのまま引き継ぐため、上の賃貸ビルを相続して6,000万円で売ると、譲渡所得は6,000万円−1,800万円(減価償却後はさらに少ない)−譲渡費用となり、「買った値段とほぼ同じで売ったのに多額の譲渡所得税がかかる」ことになります。相続税の評価は通常どおり路線価等で行うため相続税には影響しませんが、売却の手取りが想定より少なくなる点に注意が必要です。

減価償却費も引き継いだ低い取得価額を基に計算するため、不動産所得の経費も少なくなります。

親が譲渡した年に亡くなった場合

被相続人が物件を売却した後、買換資産を取得する前に亡くなった場合、譲渡した本人と買い換える本人が異なることになります。この場合でも、相続人が一定の期間内に買換資産を取得して事業に使えば特例の適用が認められる取り扱いがありますが、準確定申告での手続きや届出が必要になります。該当する場合は要件を最新の情報で確認し、4か月以内の準確定申告の期限までに判断してください。

逆に、被相続人が買換資産を先に取得していて、譲渡する前に亡くなった場合は、相続人が譲渡しても特例の対象にはなりません。

相続人が確認すべき資料

  • 被相続人の過去の確定申告書控え(譲渡所得の内訳書に買換え特例の記載があるか)
  • 買換え時の「買換資産の明細書」
  • 現在の物件の取得価額と減価償却の計算明細

相続した賃貸物件の売却を検討している場合は、特例の履歴の有無で税額が大きく変わるため、売却価格の交渉前に取得費を確定させておくことをおすすめします。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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