農家の相続は、農地という特殊な財産を中心に、評価・納税猶予・農地法の手続きが絡み合います。農地の納税猶予そのものの仕組みは別の記事で解説していますので、この記事では、納税猶予を使うかどうかの判断の前提となる「評価」と「手続き」、見落としやすい「農業用施設用地」を中心に整理します。
農地の評価は4つの区分で異なる
農地は、都市計画や農地法の区分によって評価方法が変わります。
| 区分 | 評価方法 | 目安 |
|---|---|---|
| 純農地・中間農地 | 倍率方式(固定資産税評価額×倍率) | 評価は比較的低い |
| 市街地周辺農地 | 市街地農地として評価した額の80% | やや高い |
| 市街地農地 | 宅地比準方式(宅地としての評価 − 宅地造成費)または倍率方式 | 宅地並みに高い |
| 生産緑地 | 市街地農地の評価から、買取り申出までの期間に応じて5〜35%減額 | 制限の分だけ減額 |
市街地農地は、周辺の宅地の路線価から、宅地にするための造成費(国税局が毎年公表する単価)を差し引いて評価します。例えば、宅地としての評価が1㎡8万円、造成費が1㎡1万円の農地1,000㎡なら、(8万円 − 1万円)× 1,000㎡ = 7,000万円です。農地は区分ごとに「一団の農地」を評価単位とするため、隣接する筆はまとめて評価し、地積規模の大きな宅地の補正が使えることもあります。
農業委員会への届出
農地を相続で取得した場合、農地法の許可は不要ですが、取得を知った日からおおむね10か月以内に農業委員会へ届出が必要です。届出を怠ると過料の対象になるとされています。相続した農地を他人に貸したり売ったりする場合は、改めて農地法の許可が必要です。農業を続けないなら、農地中間管理機構(農地バンク)への貸付けも選択肢です。
納税猶予を使うかどうかの判断
農業相続人が農業を続ける場合、農地の価額のうち「農業投資価格」を超える部分に対応する相続税が猶予され、終身営農などで免除されます。評価額が高い市街地農地ほど効果は大きくなりますが、途中でやめると猶予税額と利子税をまとめて納めることになります。3年ごとの継続届出も必要です。相続人の年齢と後継者の有無から、猶予を使うか、売却や転用の自由を優先するかを決めます。
農業用施設用地の評価
農業用の倉庫、作業場、ビニールハウスの敷地(農業用施設用地)は、市街化調整区域内であれば「農地として評価した額+宅地造成費」で評価する取扱いがあり、一般の宅地より低くなるのが通常です。評価を省略したり、周辺の宅地と同じ路線価で高く評価したりする誤りが起きやすい部分です。
農家の相続は、農地の筆数が多く、評価と手続きの両方で手間がかかります。固定資産税の課税明細と農地台帳を揃えて、早めに無料相談へお持ちください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。