作家や作曲家、発明家、個人事業主が亡くなると、著作権・特許権・営業権といった形のない財産が相続の対象になることがあります。いずれも「将来どれだけの収入をもたらすか」を現在の価値に引き直して評価する考え方ですが、計算式はそれぞれ異なります。
著作権の評価
評価額 = 年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率
- 年平均印税収入:課税時期の属する年の前年以前3年間の印税収入の平均額
- 評価倍率:課税時期後の各年の印税収入が何年続くかを精通者(出版社など)の意見を基に見積もり、その年数に応じた基準年利率による複利年金現価率
印税収入が年300万円(3年平均)、今後10年続くと見込まれ、10年の複利年金現価率を仮に9.5とすると、300万円 × 0.5 × 9.5 = 1,425万円です。複利年金現価率は国税庁が公表する基準年利率に基づく表で確認してください。
特許権の評価
評価額 = 課税時期後の各年の補償金額を、それぞれ基準年利率で複利現価に割り引いた金額の合計
特許を他社に実施させて得ている実施料(補償金)が対象で、将来受け取る補償金の年額を、権利の残存期間(最長で課税時期から特許の存続期間満了まで)にわたって見積もります。補償金の額が確定していない場合は、過去の実績などから推定します。
亡くなった方が自分で特許を実施して事業を行っていた場合は、特許権を単独で評価せず、営業権の評価に含めます。
営業権(のれん)の評価
事業が同業他社より高い利益を上げている場合、その超過収益力を「営業権」として評価します。
超過利益金額 = 平均利益金額 × 0.5 − 標準企業者報酬額 − 総資産価額 × 0.05 営業権の価額 = 超過利益金額 × 営業権の持続年数(原則10年)に応じた複利年金現価率
- 平均利益金額:課税時期前3年間の所得の平均(非経常的な損益や支払利子などを調整)
- 標準企業者報酬額:平均利益金額の規模に応じた算式で計算する、経営者の働きに相当する報酬
- 総資産価額 × 0.05:投下資本に対する通常の利回り相当
超過利益金額がゼロ以下なら営業権はゼロです。
医師・弁護士・税理士などの個人の技能や資格に依存する事業の営業権は、その人が亡くなれば事業が続かないため、評価しません。
実務上の注意点
これらの財産は、申告漏れになりやすい一方で、評価額がゼロになるケースも多いものです。著作権は出版社との契約書や印税の支払明細、特許権は特許庁の登録原簿と実施許諾契約書、営業権は過去3年の確定申告書と決算書から判断します。評価倍率や複利年金現価率は、課税時期の基準年利率によって変わるため、国税庁の公表値を確認してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。