相続税の土地評価は路線価方式・倍率方式が原則ですが、路線価は時価のおおむね8割程度を目安に設定されているとされ、通常は通達評価のほうが時価より低くなります。ところが、土地の個別事情によっては通達評価のほうが時価より高くなることがあり、その場合は不動産鑑定士の鑑定評価額を「時価」として申告することが認められる余地があります。
鑑定評価が有効になりやすい土地
- 極端な不整形地・無道路地:通達の補正率では減額しきれないほど利用価値が低い
- 広大な土地で宅地分譲が困難なもの:地積規模の大きな宅地の規定が使えず、通達評価が時価を上回る
- 土壌汚染・埋蔵文化財包蔵地:浄化費用や発掘調査費用が多額で、通達には明確な減額規定がない
- 地価が急落した地域:路線価は1月1日時点の価格のため、年の途中で大きく下落した場合
- 崖地・急傾斜地・高圧線下地など複数の減価要因が重なる土地
- 市街化調整区域内の雑種地で、通達のしんしゃく割合では実態に合わない場合
形の整った住宅地などでは鑑定評価額が通達評価を下回ることはほとんどありません。
申告での扱いと否認リスク
相続税法は財産を「時価」で評価すると定めており、通達はその時価を求める方法です。したがって、鑑定評価額が適正な時価であると認められれば、通達評価より低い価額で申告することに法律上の問題はありません。
ただし、税務署は通達評価を原則として扱うため、鑑定評価額が採用されるには、「通達評価では時価を適切に反映できない特別な事情」があることと、鑑定評価の内容が合理的であることの両方が必要です。鑑定書の根拠が弱い、取引事例の選び方が恣意的、といった場合は否認され、通達評価との差額に対して追徴と加算税が生じる可能性があります。
費用対効果の考え方
鑑定評価の費用は土地1件あたり数十万円程度が一般的です。通達評価と鑑定評価の差が1,000万円で、相続税の適用税率が30%なら税額の差は300万円ですから、費用を払っても効果があります。差が小さい、または税率が低い場合は、鑑定を取っても費用倒れになります。
実務の進め方
- まず通達に基づく評価を丁寧に行い、使える補正(不整形地・無道路地・利用価値低下など)をすべて検討する
- それでも時価より明らかに高いと考えられる土地について、鑑定士に「鑑定評価額が通達評価を下回る見込みがあるか」を事前に簡易査定してもらう
- 見込みがある場合に正式な鑑定を依頼し、申告書に鑑定書を添付して時価で申告する
通達の補正を尽くせば十分に下がる土地も多いため、「鑑定ありき」ではなく、通達評価の精度を上げることが先です。事情のある土地をお持ちの方は早めにご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。