上場株式の相続税評価の細かい論点|配当落ち・権利落ちの調整と未収配当金・配当期待権

上場株式の評価では、亡くなった日が権利落ち日から基準日の間にある場合に終値の調整が必要です。また、基準日後の配当は配当期待権や未収配当金として別に財産計上します。見落としやすい論点を時系列で整理し、計算方法を解説します。

上場株式の評価は「課税時期の終値と、その月・前月・前々月の月平均終値のうち最も低いもの」が基本ですが、亡くなった日が配当の時期に近いと、それだけでは済まない細かい調整があります。特に、3月末や9月末の決算日前後に亡くなった場合は必ず確認が必要です。

配当落ち・権利落ちとは

配当や株式分割などの権利を受けられる株主は、「基準日」(決算日など)に株主名簿に載っている人です。株式の受け渡しには日数がかかるため、基準日の数営業日前(権利付最終日)を過ぎると、その株式を買っても配当は受けられません。翌営業日が「配当落ち日(権利落ち日)」で、株価は理論上、配当相当分だけ下がります。

課税時期が権利落ち日から基準日の間にある場合

この期間に亡くなった場合、課税時期の終値は配当落ち後の低い価格です。しかし相続人は基準日に株主として配当を受け取れるため、「配当を受け取る権利」と「配当落ち後の株価」を別々に評価すると、配当分が二重に落ちた形になります。

そこで、課税時期の終値の代わりに、権利落ち日の前日以前で課税時期に最も近い日の終値を用いることとされています。月平均終値についても、権利落ち日が課税時期の月に含まれる場合は、落ち前の期間だけ、または落ち後の期間だけで平均するなどの調整があります。

配当期待権と未収配当金

課税時期の状況 財産の種類 評価方法
基準日の翌日から配当確定(株主総会の決議)前 配当期待権 配当金額 − 源泉所得税相当額
配当確定後、支払い前 未収配当金 配当金額 − 源泉所得税相当額
配当の支払い後 預貯金に含まれる −

3月末決算の会社で4月に亡くなった場合、6月の株主総会で確定する配当は「配当期待権」として財産に計上します。計上し忘れが多い項目です。

計算例

3月31日が基準日、3月29日が権利落ち日の銘柄を1,000株保有し、3月30日に亡くなった場合。3月28日の終値が2,050円、3月30日の終値が2,000円、1株当たり配当50円(源泉所得税率20.315%)とします。

  • 株式の評価:権利落ち前の3月28日の終値2,050円を課税時期の終値として採用(月平均との比較も調整後の数値で行う)
  • 配当期待権:50円 × 1,000株 = 5万円、源泉所得税相当額 5万円 × 20.315% = 1万157円 → 5万円 − 1万157円 = 3万9,843円

株式と配当期待権を合わせて相続財産に計上します。

注意点

証券会社の残高証明書は課税時期の終値で評価額を記載していることが多く、権利落ちの調整は反映されていません。また、株式分割の権利落ちでは株数と価格の両方が変わるため、分割前後の株数と終値の対応を確認します。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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