家族信託(民事信託)は、財産を持つ人(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産の管理や処分を任せ、その利益を本人や指定した人(受益者)が受け取る仕組みです。認知症による「資産凍結」への備えとして利用が増えています。
仕組みの例
父が自宅と預金を長男に信託し、受益者は父自身とします。父が認知症になっても、長男は信託契約の範囲で自宅を売却したり、預金から介護費用を払ったりできます。父が亡くなったときの信託財産の行き先(残余財産の帰属)も契約で決めておけます。
税務上のポイント
- 受益者が父本人(自益信託)であれば、信託を設定しても贈与税はかかりません。税務上は父の財産のままです
- 父が亡くなり、信託財産が長男などに移るときは、通常どおり相続税がかかります。家族信託自体に節税効果はありません
- 信託した不動産から出る損失(赤字)は、他の所得と通算できません。賃貸不動産を信託する場合は注意が必要です
- 信託不動産の登記(信託登記)が必要で、登録免許税がかかります
費用と手続き
信託契約書は、司法書士や弁護士などの専門家に作成を依頼するのが一般的で、財産の規模に応じて数十万円程度の費用がかかります。公正証書で作成するのが安全です。
向いているケース
- 認知症になった後も不動産の売却や建て替えの可能性がある
- 賃貸不動産の管理を子に引き継ぎたい
- 障害のある子のために、親の死後も財産管理を続けたい
遺言・生命保険・生前贈与と組み合わせて設計すると、認知症対策と相続対策の両方をカバーできます。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。