相続人の中に、生活保護を受けている方や障害年金・各種手当を受給している方がいる場合、「相続で財産をもらうと受給が止まるのではないか」という不安から、相続放棄を考えることがあります。制度ごとに判断の基準が異なるため、財産そのものを見る制度か、所得を見る制度かで分けて整理します。
生活保護:相続財産は「収入」として扱われる
生活保護は、資産や能力をすべて活用しても最低限の生活ができない場合に支給されます。相続で預貯金や不動産を取得すると、それは収入認定され、原則として次のようになります。
- 取得した財産の額が保護費を上回る場合、相続開始以降に受けた保護費の返還を求められることがある
- 財産で当面の生活が成り立つなら、保護は停止または廃止される
- 財産が少額で生活に足りない場合は、収入認定のうえ保護が継続する
相続が開始したら、速やかに福祉事務所に届け出る義務があります。黙っていて後から判明すると、不正受給として扱われるおそれがあります。
保護を受け続けるために相続放棄をすることは、「利用できる資産を活用する」という原則に反するため、原則として認められません。ただし、借金が財産を上回る場合や、売却できず維持費だけかかる不動産など、相続することで生活が悪化するケースでは、福祉事務所と相談のうえ放棄が認められることがあります。
障害年金:所得基準の制度は相続財産に影響しない
障害年金のうち、保険料を納めて受給する障害基礎年金・障害厚生年金には所得制限がありません。20歳前の傷病による障害基礎年金には所得制限がありますが、判定するのは所得であり、相続で取得した財産は所得税法上の所得ではないため、相続自体は年金に影響しません。
ただし、相続した不動産を貸して家賃収入を得たり、相続した株式の配当を受けたりすれば、それは所得になります。年間の所得が制限額を超えると、翌年度の年金が一部または全部停止されることがあるため、相続後の収入の見通しも確認してください。
児童扶養手当・各種手当・医療費助成
児童扶養手当や自治体の医療費助成なども、多くは前年の所得で判定します。相続財産は所得ではないため取得時点では影響しませんが、相続した資産から生じる所得は翌年以降の判定に入ります。一部の制度では資産の保有状況を申告させるものもあるため、個別に確認が必要です。
相続税との関係
受給の有無は相続税の計算には影響しません。障害のある相続人には障害者控除(10万円または20万円×85歳までの年数)があり、税額から直接差し引けます。
遺産分割の段階で、受給中の相続人の生活に配慮して財産の種類や取得額を調整することも検討できます。生活設計と税負担の両面から無料相談でご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。