父が亡くなって申告の準備をしているうちに母も亡くなった。こうした「数次相続」では、父の相続税の申告書を誰がどのように書くのかが分かりにくいところです。この記事では、申告書の具体的な記載方法と期限のルールを解説します。
母の申告義務を母の相続人が引き継ぐ
父の相続(一次相続)で母は相続人ですが、母が申告前に亡くなると、母が負っていた申告・納税の義務は母の相続人(子など)が承継します。子は「父の相続人として」の申告と、「母の相続人として母の分を代わりに行う」申告の両方の立場を持ちます。
申告期限は次のように分かれます。
- 父の相続人として子自身の分: 父の死亡を知った日の翌日から10か月
- 母の相続人として承継した母の分: 母の死亡を知った日の翌日から10か月(相続税法27条2項により延長される)
実務では両方を1通の申告書にまとめて、早いほうの期限までに提出するのが一般的です。
申告書の記載方法
- 第1表: 父の相続についての申告書なので、被相続人は父。相続人の欄には母も「取得した人」として記載し、氏名の前に「相続人」の肩書きを付ける
- 第1表の付表1(納税義務等の承継に係る明細書): 母の欄を作り、母の相続人全員(子など)の氏名・住所・母との続柄・承継割合(母の法定相続分または遺産分割の割合)を記載する。母が納めるべき税額を、承継割合に応じて各人が引き継ぐ
- 第11表(財産の明細): 父の遺産のうち母が取得する分を、母の名義で記載する。母が死亡していても「母が取得した」とすることで、配偶者の税額軽減を使える
- 署名: 母の欄は母の相続人が「相続人代表」として署名し、各人の氏名も付表に記載する
母が取得する父の財産は、遺産分割協議で決めます。母が亡くなっているので、母の相続人が母の立場で協議に参加します。子が一人だけなら、父の相続人としてと母の相続人としての両方の立場で一人で協議書を作る形になります。
税額に影響するポイント
- 配偶者の税額軽減は、母が死亡していても一次相続で母が取得した財産に適用できる
- ただし一次相続で母に多く取得させると、母の相続(二次相続)でその財産に再び相続税がかかる。10年以内の相続なので相次相続控除で一部は調整されるが、全額ではない
- 母が取得した財産に小規模宅地等の特例を使う場合、母の死亡後に売却していても、母が「申告期限まで保有」していた扱いになるかは個別判断になるため確認が必要
一次相続での母の取得割合を変えると、一次・二次を合わせた税額が数百万円変わることがあります。両方の相続をまとめて試算した上で協議を進めてください。相続税シミュレーションもご活用ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。