親の土地の上に子が自宅を建て、地代を払わずに住んでいるケースはよくあります。この無償の貸し借りを「使用貸借」といいます。相続のとき、この土地に小規模宅地等の特例が使えるかどうかは、子が被相続人と「生計を一にしていたか」で分かれます。生計が一なら居住用の特例を使えますが、生計が別なら原則として使えません。
使用貸借の土地は更地として評価される
まず評価の面では、使用貸借で貸している土地は借地権の控除ができず、自用地(更地)として100%で評価されます。地代を取っていないため、借地権としての経済的価値が発生していないと考えるからです。他人に有償で貸している場合の貸宅地評価(借地権割合を引く)とは異なります。
つまり、特例が使えないとかなり高い評価のまま課税されることになり、特例の可否が重要になります。
生計を一にする親族の居住用なら対象
小規模宅地等の特例の居住用には、「被相続人の居住用」のほかに「被相続人と生計を一にしていた親族の居住用」が含まれます。子が親の土地に家を建てて住んでいても、親と生計が一であれば、その土地は特例の対象になり得ます。
取得者の要件は次の通りです。
- その土地を取得したのが、その家に住んでいた生計一の親族本人であること
- 申告期限までその家に居住し、土地を保有し続けること
ただし、子が親に地代を払っていた場合は「貸付事業用」の判定になり、居住用としては使えません。固定資産税相当額程度の負担であれば使用貸借の範囲とされるのが一般的です。
生計が別だと特例は使えない
親と子が別々に生活費を管理し、経済的に独立していた場合、その土地は「生計が別の親族が無償で使っていた土地」になります。この場合、被相続人の居住用でも事業用でも貸付用でもないため、どの区分の特例にも該当しません。
例えば、土地200㎡(評価額4,000万円)を子が取得する場合、生計が一なら減額は4,000万円×80%=3,200万円ですが、生計が別なら減額ゼロで4,000万円がそのまま課税対象になります。
実務上の対応
生計一の判定は、生活費の負担状況や家計の実態で判断されます。日頃から親子間で生活費の受け渡しがあり、その記録が残っていれば判断材料になります。判定が難しい場合は、申告前に実態を整理して相談されることをおすすめします。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。