相続開始前の一定期間内の贈与は、相続財産に持ち戻して相続税を計算します。そのまま計算すると贈与税と相続税の二重課税になるため、持ち戻した贈与について納めた贈与税を相続税から差し引く仕組みが「贈与税額控除」です。計算は年ごとに按分して行い、暦年課税分は引ききれなくても還付されません。
控除できる贈与税の計算
ある年に受けた贈与のうち、一部だけが持ち戻しの対象になることがあります。例えば、相続開始の年に親からの贈与と祖父からの贈与の両方を受けていた場合、持ち戻すのは亡くなった親からの贈与だけです。この場合、その年の贈与税額を按分します。
控除額=その年の贈与税額×(持ち戻した贈与財産の価額÷その年の贈与財産の合計額)
計算例として、相続開始の2年前に父から500万円、祖父から300万円の贈与を受け、その年の贈与税を納めていた場合を考えます。
- その年の贈与額合計:800万円
- 基礎控除後:800万円-110万円=690万円
- 贈与税額(特例税率、一般的な速算表による):690万円×30%-90万円=117万円
- 父からの贈与に対応する控除額:117万円×500万円÷800万円=約73万1,000円
この約73万1,000円を、父の相続税の算出税額から差し引きます。
延長された4年分の100万円控除との関係
2024年以降の贈与から持ち戻し期間が段階的に7年に延びており、延長された4年分の贈与は合計100万円まで相続財産に加算しません。この100万円控除で加算対象から外れた部分については、対応する贈与税額控除も行いません。控除の按分計算では、実際に加算した金額をもとに計算します。
引ききれなくても還付されない
暦年課税分の贈与税額控除は、その相続人の算出税額を限度に差し引きます。贈与税の方が相続税より多かった場合でも、差額は還付されません。贈与税の税率が相続税より高いケース、例えば相続税がかからない規模の相続で直前に大きな贈与をしていたケースでは、納めた贈与税が戻らないことになります。
一方、相続時精算課税を選択していた贈与については、納めた贈与税が相続税を上回れば差額が還付されます。制度の性質が異なるためです。
| 制度 | 控除しきれない贈与税 |
|---|---|
| 暦年課税の贈与税額控除 | 還付なし |
| 相続時精算課税の贈与税額控除 | 還付あり |
実務上の対応
贈与税額控除を受けるには、その贈与について贈与税の申告をしていたことと、申告書に贈与税の申告書の控えなどを添付することが必要です。過去の申告書控えは保管しておき、見当たらない場合は税務署で開示請求を検討します。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。