「暦年課税と精算課税はどちらが得か」に一律の答えはありません。分かれ目は、相続税の税率(限界税率)と、贈与できる年数、相続までの期間の3つです。考え方の筋道を示します。
判断の軸1:相続税の限界税率と贈与税率の比較
暦年贈与の効果は、「相続税で課税されるはずの財産を、より低い贈与税率で先に移す」ことにあります。相続財産の最上位部分にかかる税率(限界税率)が30%の人なら、贈与税の実効税率が30%を下回る範囲の贈与が有利です。
特例税率で年510万円を贈与した場合の贈与税は (510万円−110万円)×15%−10万円=50万円 で、実効税率は約9.8%です。限界税率30%の人なら、1年あたり約100万円の節税になります。相続税が基礎控除以下の家庭なら、暦年贈与で節税する余地はそもそもありません。
判断の軸2:贈与できる年数と持ち戻し
暦年贈与は年数をかけて少しずつ移すことが前提です。持ち戻し期間が7年に延びたため、相続までの期間が短いと相続人への暦年贈与は大部分が加算されてしまいます。一方、精算課税は年110万円以下の部分が加算されないため、短期間なら精算課税の基礎控除の方が確実に効きます。
- 相続まで10年以上見込め、限界税率が高い → 暦年贈与で年数をかける
- 相続が近い、または贈与額が年110万円以下 → 精算課税の基礎控除
- 相続人でない孫へ贈与する → 暦年でも持ち戻しなし(遺贈・保険金の受取がない場合)
判断の軸3:財産の種類
精算課税は贈与時の価額で相続税を計算します。将来値上がりが見込める自社株や開発予定地は精算課税で早めに移すと、値上がり分が相続税の対象外になります。値下がりしそうな財産は逆効果です。
実際には「父から精算課税で自社株、母から暦年で現金」のように組み合わせることが多く、家族ごとの設計が必要です。相続税シミュレーションで限界税率を確認し、無料相談で贈与計画を組み立てることをおすすめします。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。