信託銀行や一部の銀行では、毎年の暦年贈与を手続きとして支援する商品(暦年贈与信託、生前贈与サポートなど名称はさまざま)を扱っています。贈与の記録を残しやすい一方で、「商品を使えば贈与が必ず認められる」わけではありません。仕組みと限界を解説します。
仕組み
一般的な流れは次のとおりです。
- 贈与者が信託銀行と契約し、贈与の原資となる資金を預ける
- 毎年、贈与者が「今年は誰にいくら贈与するか」を銀行に通知する
- 銀行が受贈者に意思を確認し、受贈者が受け取りを承諾する
- 銀行が受贈者名義の口座に資金を送金し、贈与の記録(契約の確認書)を双方に交付する
贈与者と受贈者それぞれの意思確認を毎年行い、その記録を銀行が保管することで、贈与の成立を示す証拠を整えやすくなります。贈与契約書の作成や振込の手間を省けるのが利点です。
税務上の位置づけ
この商品自体に税制上の特典はありません。年110万円以下の贈与は非課税、超えた分は受贈者が申告する通常の暦年課税です。相続開始前7年以内の贈与が持ち戻されるルールも同じです。あくまで「暦年贈与の事務を代行し、記録を残す」サービスと理解してください。
注意点
- 定期贈与とみなされるリスク: 毎年同じ日に同じ金額を機械的に送ると、最初から総額を約束した定期金の贈与とみられる余地があります。多くの商品は毎年の意思確認で対応していますが、贈与者が自分の意思で毎年決めている実態が必要です
- 贈与者の判断能力: 贈与者が認知症などで意思表示できなくなると、その年以降の贈与は実行できません。商品に入れた資金は贈与者の財産として残ります
- 受贈者の管理: 送金先の口座を受贈者が自分で管理し、使えることが必要です。親が子の口座のカードを持っていれば、商品を使っても名義預金の問題は残ります
- 手数料・最低金額: 契約手数料や、1回あたりの贈与額の下限が設定されていることがあります
- 持ち戻し: 相続人への贈与は7年以内の分が加算されるため、相続が近い高齢の贈与者では効果が限られます
向いている人・向いていない人
複数の子や孫に毎年贈与し、記録を確実に残したい方には有効です。一方で、贈与の相手が1人で、自分で契約書と振込を管理できるなら、商品を使わなくても同じ効果が得られます。商品の利用は手段であり、贈与の設計(誰に・いくら・何年)が先です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。