被相続人が銀行の貸金庫を借りていた場合、税務調査では「貸金庫はありますか」と必ず聞かれ、調査官が相続人と一緒に金融機関へ行き、開扉に立ち会って中身を確認することがあります。貸金庫の中身は申告書に現れにくいため、調査の重点項目の一つです。
貸金庫があることは把握されている
貸金庫の契約は、金融機関の取引履歴に使用料の引き落としとして現れます。被相続人の通帳に年数千円程度の「貸金庫使用料」の記載があれば、調査官は契約の存在を前提に質問してきます。「ない」と答えて後で使用料の記載が見つかると、隠す意図があったと受け取られかねません。契約の有無は正直に答えるのが鉄則です。
相続開始後の開扉の手続き
相続開始後は貸金庫が凍結され、相続人が単独で開けることはできません。一般的な流れは次のとおりです。
- 金融機関に相続の発生を連絡する
- 戸籍(または法定相続情報一覧図)、相続人全員の同意書と印鑑証明書、鍵またはカードを提出する
- 相続人全員(または代表者)の立会いで開扉し、内容物の一覧を金融機関職員が作成する
- 内容物を持ち帰り、必要なら解約する
申告前に開扉して中身を確認し、財産があれば申告書に計上しておくことが原則です。遺言書が入っている可能性があるときは、開扉前に相続人全員で立ち会う方が後のトラブルを防げます。
調査当日の立会いで見られること
調査官は、開扉時に金融機関が作った内容物の一覧と、現在の中身を照合します。見られるのは主に次の点です。
- 現金:申告書の「現金」に計上されているか。帯封付きの現金は銀行の出金記録と突き合わされる
- 預金証書・株券・金地金・貴金属:申告漏れの財産がないか
- 不動産の権利証・契約書:申告されていない不動産や貸付金がないか
- 家族名義の通帳・印鑑:被相続人が家族名義の口座を管理していた(名義預金)証拠になり得る
- 遺言書・メモ:財産の分け方や生前贈与の記録
相続開始後に相続人が中身を持ち出していると、「何が入っていたか」を開扉時の一覧と当日の質問で確認されます。
調査前の整理
貸金庫に現金や貴金属があった場合は、相続開始時点の内容を写真と一覧で記録し、申告書との対応を説明できるようにしておきます。すでに申告漏れに気づいているなら、調査の指摘前に修正申告した方が加算税が軽くなります。貸金庫は「隠し財産」の象徴のように扱われがちですが、記録が整っていれば立会いは短時間で終わるものです。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。