相続税には、同じ被相続人から財産を取得した相続人は、互いに他の相続人の相続税について連帯して納付する義務を負うという特殊なルールがあります(連帯納付義務)。他の相続人が納めなければ、自分が納めた後でも税務署から請求が来ることがあります。ただし、請求には手順があり、免除される場合もあります。
連帯納付義務の範囲
連帯して納付する義務は、自分が相続で受けた利益の額を限度とします。受けた利益とは、取得した財産の価額から、自分が負担した債務・葬式費用と自分の相続税額を引いた額です。たとえば2,000万円の財産を取得し、自分の相続税が200万円なら、他の相続人の税額について最大1,800万円まで負担する可能性があるということです。
通知・督促の流れ
税務署は、いきなり連帯納付義務者に請求するのではなく、次の順で手続きを進めます。
- 本来の納税義務者(滞納している相続人)に督促状を送る
- 督促状を発してから1か月を経過しても完納されない場合、連帯納付義務者に**「相続税が完納されていない旨のお知らせ」**を送る
- それでも納付がなければ、連帯納付義務者に納付通知書を送り、納付を求める
- 納付通知書を受けてから2か月を経過しても納付がなければ、連帯納付義務者に督促状が送られ、滞納処分(差押え)に進むことがある
連帯納付義務者が納めるときの遅延の負担は、納付通知書を受けた日の翌日から2か月以内は利子税(延滞税より低い割合)、それを過ぎると延滞税です。本来の納税者の延滞税をそのまま負担するわけではありません。
免除されるケース
次の場合は連帯納付義務を負いません。
- 本来の納税義務者の申告期限から5年を経過した日までに「納付通知書」が発せられていない場合(申告期限から5年で原則として免除)
- 本来の納税義務者が延納の許可を受けた税額
- 本来の納税義務者が納税猶予(農地・非上場株式など)の適用を受けた税額
実務上の備え
- 遺産分割のときに、各相続人が自分の税額を納められる財産を取得しているかを確認する。不動産ばかりを相続して納税資金がない相続人がいると、他の相続人にリスクが及ぶ
- 納税資金が足りない相続人には、申告期限までに延納を申請してもらう(許可されれば他の相続人は免除される)
- 連帯納付で代わりに納めた相続人は、本来の納税者に求償できる。納付の記録と、求償する旨の書面を残す
連帯納付義務は、遺産分割の段階で納税資金まで考えておけば現実化しにくい制度です。申告書を作る前に、相続人ごとの納税の見通しを確認してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。