相続税の税務調査で最も時間をかけて見られるのが預金の動きです。対象は被相続人の口座だけではなく、配偶者・子・孫など家族名義の口座も含まれ、期間はおおむね相続開始前5年分、長ければ10年分です。税務署は相続人の承諾がなくても金融機関に照会できるため、「見せなければ分からない」ということはありません。
何年分さかのぼるのか
税務署が更正できる期間(除斥期間)は原則5年、偽りや不正があれば7年です。このためまず5年分を確認し、名義預金や贈与の疑いがあれば贈与の時期を特定するために10年以上前の取引まで見ることがあります。金融機関の取引履歴は10年程度保存されているのが一般的で、税務署は調査前にすでに取り寄せていることも珍しくありません。
家族名義の口座が見られる理由
- 名義預金の確認:被相続人の資金が家族名義の口座に入っていれば、名義に関係なく相続財産になります。入金元が被相続人の口座からの振替や、同じ日に被相続人の口座から出金した現金でないかを突き合わせます
- 贈与の実態確認:贈与契約書があっても、通帳や印鑑を被相続人が管理していれば贈与とは認められません。口座の開設時期、届出印、利用状況を見ます
- 持ち戻しの確認:相続開始前3年(段階的に7年)以内の贈与は相続財産に加算されるため、該当する入金がないか確認します
- 相続人の資産の裏付け:相続人の収入に比べて資産が多ければ、原資が被相続人ではないかを疑います
調査前に整理しておきたい入出金
- 被相続人の口座から50万円以上の出金があった日付と使途(医療費、リフォーム、家族への資金、現金で保管など)
- 家族名義の口座への定期的な入金(生活費か、贈与か、預かりか)
- 亡くなる直前の出金と、相続開始時点で手元に残っていた現金の額
- 解約した定期預金や満期保険金の行き先
「使途が思い出せない」出金への対応
数年前の出金の使途を正確に思い出すのは難しいものです。調査官も生活費程度の出金まで追及することはあまりなく、不自然に大きい出金や、家族の口座と対応する入金が焦点になります。思い出せない場合は推測で答えず、領収書や手帳、当時の家計の状況から説明できる範囲で答え、残りは「不明」と伝える方が誠実です。使途が説明できない多額の出金は、相続開始時の手元現金として申告しておく方が、調査で否認されるより負担が軽く済むことが多いといえます。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。