「申告書に書かなければ分からないだろう」という考えは、相続税では通用しません。税務署には被相続人の生前の所得や財産、相続人への資金の流れを示す情報が、複数の経路で集まる仕組みがあります。どの情報がどこから届くのかを知れば、申告の段階で何を漏らしてはいけないかがはっきりします。
税務署が持っている主な情報
| 情報源 | 内容 |
|---|---|
| KSK(国税総合管理システム) | 過去の所得税・贈与税の申告、財産債務調書、国外財産調書などを納税者ごとに管理 |
| 市区町村からの死亡の通知 | 相続の発生と固定資産の保有状況。「相続についてのお尋ね」を送る基礎になる |
| 法定調書(支払調書) | 生命保険金・死亡退職金の支払調書、株式の配当・譲渡の支払調書、報酬の支払調書など |
| 不動産登記の情報 | 法務局からの通知で、所有権移転(購入・売却・相続・贈与)を把握。不動産の取得資金についての「お尋ね」の根拠 |
| 国外送金等調書 | 100万円を超える海外への送金・海外からの受金を金融機関が提出 |
| 国外財産調書・財産債務調書 | 一定額以上の資産を持つ人が自ら提出。提出の有無が加算税の増減に影響 |
| CRS(共通報告基準)情報 | 海外の金融機関にある口座の残高・利子などを各国の税務当局が自動で交換 |
| 金融機関への照会 | 税務署が必要に応じて被相続人・家族の取引履歴を直接取り寄せる |
申告内容との照合のされ方
- 死亡の通知を受けた段階で、KSK上の所得・財産情報から相続税がかかりそうな人を選び、お尋ねや申告の有無を確認する
- 提出された申告書を、**支払調書(保険金・退職金・株式)**と突き合わせ、計上漏れがないか機械的に確認する
- 生前の所得(給与・年金・不動産所得・退職金)の累計から推定される資産と、申告された財産を比べる
- 不動産の売却代金、満期保険金、退職金の行き先を通帳で追い、家族への移転がないか見る
- 海外送金や国外財産調書の情報から、海外資産の計上漏れを確認する
申告のときに意識すべきこと
- 生命保険金・死亡退職金は、金額が支払調書で税務署に届いている前提で、受取人・金額を正確に書く
- 過去に売却した不動産の代金が「どこに行ったか」を説明できるようにしておく
- 海外に口座や不動産があれば、少額でも申告書に記載する
- 相続人への生前の資金移転は、贈与税の申告の有無と合わせて整理する
税務署の情報は年々精度が上がっています。「把握されていない財産を省く」のではなく、税務署の情報と申告書が一致する状態を作ることが、調査を短く終わらせる一番の方法です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。