書面添付制度の中心にあるのが、税理士への意見聴取です。相続人が直接関わらない手続きのため実態が見えにくいのですが、ここで何が行われるかを知っておくと、書面添付の価値が理解しやすくなります。税理士の側から見た意見聴取の流れを紹介します。
意見聴取までの流れ
- 税務署の担当者から税理士に電話があり、意見聴取を行いたい旨と候補日が伝えられる(相続人への事前通知はこの段階では行われない)
- 税理士は申告書と添付書面、作成時の資料を見直し、質問が予想される点の裏付けを整理する
- 指定日に税務署に出向く(電話や書面で行われることもある)。所要時間は30分から1時間程度が一般的
当日に聞かれること
質問は、書面に記載した内容を起点に、申告書の数字との整合性を確かめる形で行われます。相続税で多いのは次のような質問です。
- 被相続人の預金の取引履歴を何年分、どの口座まで確認したか。大きな出金の使途をどう確認したか
- 相続人名義の預金について、名義預金の可能性をどのように検討したか
- 土地の評価で現地確認をしたか、補正率の根拠は何か
- 生命保険の契約の一覧をどう把握したか(支払調書と件数が合っているか)
- 生前贈与の有無と、贈与税申告との照合
- 債務・葬式費用の確認資料
税理士は、確認した資料と検討の経緯を説明し、必要なら後日、通帳のコピーや評価の計算書を追加で提出します。
結果の分かれ方
- 疑問が解消した場合:「調査に移行しない」旨の連絡があり、終了します
- 一部に疑問が残る場合:税理士が相続人に確認し、申告漏れがあれば修正申告を提出して終了することがあります。意見聴取の結果として提出する修正申告は、調査による更正を予知したものではないとして加算税が課されない取扱いです
- 解消しない場合:相続人に事前通知が行われ、通常の実地調査に移行します
相続人にとっての意味
意見聴取は、税理士が相続人に代わって説明を尽くす場です。そのためには、申告の段階で税理士にすべての通帳と家族名義の口座の情報を開示しておくことが欠かせません。税理士が知らない財産があれば、意見聴取で説明できず、調査に移行するだけでなく、書面の信頼性も損なわれます。書面添付は税理士と相続人の協力で成り立つ制度だといえます。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。