賃貸不動産を相続した年から、相続人は自分の不動産所得として確定申告をします。相続税の申告とは別の手続きで、翌年3月15日が期限です。初年度にとくに迷いやすいのが減価償却と経費の範囲なので、この記事で整理します。
減価償却は被相続人の数字を引き継ぐ
相続で取得した建物は、被相続人が取得したときの取得価額・償却の累計額(未償却残高)・耐用年数をそのまま引き継ぎます。相続時の評価額(固定資産税評価額)で新たに計算し直すのではありません。
例:被相続人が2,400万円で建てた木造アパート(耐用年数22年、定額法)、相続時の未償却残高が900万円の場合 年間の償却費=2,400万円×0.046=110万4,000円(相続年は月割り) 相続人は残りの900万円を、同じ年110万4,000円のペースで償却していきます。
被相続人の確定申告書の「減価償却費の計算」欄に数字が載っているので、申告書控えを必ず確保してください。
償却方法は相続人が改めて選ぶ
引き継ぐのは数字だけで、償却方法は相続人が取得した時点のルールで判定します。建物は1998年4月以降の取得分が定額法のみ、建物附属設備・構築物は2016年4月以降の取得分が定額法のみとされているため、被相続人が定率法で償却していた設備でも、相続人は定額法で計算するのが原則です。
経費になるもの・ならないもの
| 項目 | 不動産所得の経費 |
|---|---|
| 固定資産税(相続後の分) | なる |
| 修繕費・管理委託料・火災保険料 | なる |
| 相続登記の登録免許税・司法書士報酬 | 業務用部分は経費にできる |
| 相続税 | ならない |
| 遺産分割に関する弁護士費用 | ならない |
相続登記の費用については、業務の用に供される資産に関するものとして必要経費に算入できる扱いがあります。相続税は経費にならず、売却時の取得費加算で考慮されるだけです。
青色申告の届出期限に注意
被相続人が青色申告をしていても、相続人には引き継がれません。相続人が「青色申告承認申請書」を提出する必要があり、期限は死亡日に応じて死亡日から4か月以内などと短く設定されています。期限を過ぎると初年度は白色申告になり、青色申告特別控除(最大65万円、不動産所得は事業的規模の場合)や赤字の繰越が使えません。相続税の申告準備と同時に、所得税側の届出も済ませておきましょう。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。