不動産を法人に移す相続対策の注意点|売却・現物出資の税金と3年以内の評価ルール

賃貸不動産を自分の法人に移す相続対策は、所得の分散や株式での承継といった効果がある一方、移転時に譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税がかかります。時価での売買が必要な理由、3年以内は評価が下がらない仕組み、建物だけ移す方法を解説します。

賃貸不動産を多く持つ方が、不動産を自分の会社(資産管理法人)に移す対策を検討することがあります。家賃収入を法人と家族に分散できる、相続財産が「不動産」から「株式」に変わり承継しやすくなる、といった効果がある一方で、移転時のコストと評価のルールを知らずに進めると逆効果になります。

移す方法と移転時の税金

方法 個人側の税金 法人側の税金
売却(法人が買い取る) 譲渡所得税(時価で売ったものとして計算) 不動産取得税、登録免許税2%(土地は2027年3月末まで1.5%)
現物出資(不動産を出資して株式を受け取る) 譲渡所得税(出資も譲渡) 不動産取得税、登録免許税

どちらも個人から法人への「譲渡」なので、含み益があれば譲渡所得税がかかります。時価の2分の1未満で法人に売ると、所得税では時価で売ったものとみなされ(みなし譲渡)、法人側にも受贈益の課税が生じます。

例:取得費1,500万円(減価償却後)の賃貸建物を時価4,000万円で法人に売却 譲渡所得=4,000万円−1,500万円=2,500万円 長期譲渡の税額≒2,500万円×20.315%≒507万9,000円

法人が取得して3年以内は評価が下がらない

法人の株式を評価する際、法人が所有する不動産は原則として相続税評価額(路線価等)で評価しますが、法人が取得してから3年以内の土地建物は「通常の取引価額」(時価)で評価します。つまり、不動産を法人に移してすぐに相続が起きると、個人で持っていた場合より評価が下がらないどころか、不動産取得税などのコストだけが残る結果になります。対策の効果が出るのは移転から3年を過ぎてからと考えてください。

建物だけを法人に移す方法

土地は個人に残し、建物だけを法人に移して、法人が個人に地代を払う形が実務では多く使われます。土地の含み益に課税されず、移転コストも建物分だけで済むためです。この場合、法人と個人の間で「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出し、相当の地代または通常の地代を授受する扱いを整えておきます。届出をすれば、個人の土地は自用地評価の80%で評価され、法人側では借地権相当(20%)を純資産に加える扱いになります。

進める前に確認すること

  • 金融機関の借入がある物件は、法人への移転に金融機関の承諾が必要
  • 消費税の課税事業者なら、建物の売却に消費税がかかる
  • 法人の維持費(法人税の均等割、税理士報酬)が毎年かかる
  • 株式の承継方法(贈与・相続時精算課税・事業承継税制)を併せて設計する

不動産の法人化は効果が出るまでに時間がかかる対策です。移転コストと将来の相続税の減少額を比較し、実行するなら早めに着手することをおすすめします。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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