相続した実家を売って代金を分ける換価分割では、「売却益は誰が申告するのか」で迷う方が多いです。結論は、代表者が一人で申告するのではなく、相続人それぞれが自分の取り分に応じて申告します。この記事では、申告の分け方と、人数分だけ特例の枠が増える仕組みを説明します。
分配割合に応じて各自が申告する
遺産分割協議書に「売却代金を長男50%・長女30%・次男20%で分配する」と定めた換価分割では、譲渡所得もその割合で各相続人に帰属します。売却の便宜上、長男の単独名義で相続登記をして売却した場合でも同じです。協議書に換価分割の旨と分配割合が書かれていれば、長男から長女・次男への代金の分配は贈与にはなりません。
| 項目 | 全体 | 長男50% | 長女30% | 次男20% |
|---|---|---|---|---|
| 売却価額 | 5,000万円 | 2,500万円 | 1,500万円 | 1,000万円 |
| 取得費(概算5%) | 250万円 | 125万円 | 75万円 | 50万円 |
| 譲渡費用 | 200万円 | 100万円 | 60万円 | 40万円 |
| 譲渡所得 | 4,550万円 | 2,275万円 | 1,365万円 | 910万円 |
各相続人は、売却した年の翌年3月15日までに、自分の譲渡所得を確定申告します。
特例は相続人ごとに判定・適用される
空き家の3,000万円特別控除は、要件を満たせば各相続人がそれぞれ適用できます(売却した相続人が3人以上の場合は一人2,000万円)。上の例では3人が各2,000万円まで控除でき、長男は2,275万円−2,000万円=275万円、長女と次男は控除後ゼロになります。
取得費加算の特例も、各相続人が自分の納めた相続税のうち、売却した不動産に対応する額を自分の取得費に加えます。相続税を納めていない相続人(配偶者の税額軽減で税額ゼロなど)には加算額がありません。
申告漏れになりやすいケース
- 代表者が全額を申告し、他の相続人が申告しない(他の相続人が無申告になる)
- 分配割合を協議書に書かず、法定相続分と異なる割合で分配した(贈与と見られるおそれ)
- 相続人の一人が給与所得者で「会社の年末調整で済んでいる」と思い込む(譲渡所得は確定申告が必要)
- 売却代金のうち固定資産税の精算金を収入に含め忘れる
税務署には、不動産の売買に関する情報が登記や支払調書などから把握されています。一人でも申告が漏れていれば「お尋ね」が届くことがあるため、相続人全員で申告の要否を確認してください。
実務上の対応
換価分割の協議書を作る段階で、分配割合・費用の負担・申告の分担まで決めておくとトラブルになりません。相続税の申告を依頼した税理士に、相続人全員分の譲渡所得の申告をまとめて依頼するのが手間も少なく確実です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。