相続した建物の火災保険は、名義を変えなくても直ちに無効にはなりませんが、契約者が亡くなったままでは保険金の請求や更新ができません。この記事では、名義変更の手続きと、空き家や賃貸にする場合に見落としやすい点をまとめます。
名義変更の手続き
火災保険の契約上の権利義務は相続人に承継されます。保険会社に「契約者(および被保険者)の変更」を申し出て、次の書類を提出するのが一般的です。
- 保険証券
- 契約者の死亡が分かる戸籍(または法定相続情報一覧図)
- 新しい契約者の本人確認書類
- 遺産分割協議書など、建物を取得した人が分かる書類(保険会社によって異なる)
遺産分割が終わる前でも、相続人代表を暫定の契約者に変更できる会社が多いです。保険料を口座振替にしていた場合は口座が凍結されるため、振替口座の変更も同時に行います。長期契約の保険料を一括で払っていた場合、解約すれば未経過分が返戻されますが、相続税の評価では未経過保険料を財産として計上することがあります。
建物の所有者と被保険者を一致させる
火災保険は「保険の対象の所有者=被保険者」が原則です。遺産分割で長男が建物を取得したのに契約者・被保険者が母のままだと、保険金の支払い時に手続きが煩雑になります。相続登記を終えたら、登記上の所有者と被保険者を揃えておきましょう。地震保険は火災保険に付帯するものなので、火災保険の名義変更と同時に処理されます。
用途が変わると契約条件が変わる
| 相続後の使い方 | 保険上の注意 |
|---|---|
| 相続人が住む | 住宅物件として継続できる |
| 空き家にする | 空き家は引受を制限する会社があり、「住宅」から「一般物件」に変更が必要な場合がある |
| 賃貸に出す | 家主用の火災保険に変更。家賃収入の補償や施設賠償責任の特約を検討 |
とくに空き家は、告知せずに放置すると保険金が支払われないおそれがあります。相続後に誰も住まなくなった時点で、保険会社に用途変更を伝えてください。
相続税との関係
火災保険の保険料そのものは相続財産ではありませんが、積立型の火災保険(満期返戻金のあるもの)は解約返戻金相当額で評価して相続財産に計上します。また、相続開始後に火災で保険金を受け取った場合、その保険金は相続人の財産であり相続税の対象にはなりません。逆に相続開始前に火災があり保険金の請求権が発生していれば、請求権が相続財産になります。保険証券は相続財産の調査の段階で必ず確認しておきましょう。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。