賃貸経営の法人化と一口に言っても、法人にどこまでの役割を持たせるかで3つの方式があります。手軽さと効果はトレードオフの関係にあり、相続税対策として意味があるのはどの方式かを理解しておくことが大切です。この記事では、3方式の仕組みと税務上の効果を比較します。
3つの方式の仕組み
| 方式 | 法人の役割 | 法人に移る収入の目安 | 手間とコスト |
|---|---|---|---|
| 管理委託方式 | 入居者募集や集金などの管理業務を受託 | 家賃の5〜10%程度の管理料 | 小さい |
| サブリース方式 | 物件を一括で借り上げ、入居者に転貸 | 家賃の10〜15%程度の差額 | 中程度 |
| 所有方式 | 建物(または土地建物)を所有して賃貸 | 家賃収入の全額 | 大きい(建物の移転が必要) |
管理委託方式は、不動産の所有は個人のままで、法人が管理料を受け取る形です。設立しやすい一方、管理料が高すぎると税務調査で「業務の実態に見合わない」と否認されるおそれがあり、移せる所得は限られます。
サブリース方式は、法人が所有者から一括で借り上げ、入居者からの家賃との差額を法人の利益にします。空室リスクを法人が負うため管理委託より差額を大きく取れますが、実際に空室が出たときに法人が借上賃料を払えるだけの財務基盤が必要で、差額の割合も相場の範囲内に収める必要があります。
所有方式は、建物を法人が所有するため家賃収入の全額が法人に入ります。もっとも効果が大きい反面、建物の売買に伴う登記費用・不動産取得税・消費税がかかります。
相続税への効果の違い
相続税対策の観点では、個人の財産の増加をどれだけ抑えられるかが効果の尺度です。
- 管理委託方式:年間家賃3,000万円なら法人に移るのは150万〜300万円程度。10年で最大3,000万円
- サブリース方式:同じ条件で300万〜450万円程度。10年で最大4,500万円
- 所有方式:家賃の全額が法人に入り、個人には地代(固定資産税の2〜3倍程度)のみ。10年で数千万円から1億円超の差
一方で、管理委託方式とサブリース方式では土地建物が個人の財産のまま残るため、相続時の評価は貸家・貸家建付地として従来どおりです。所有方式では、建物が法人のものになり、個人の財産は土地と法人の株式に変わります。
共通の注意点
- 法人の株式は後継者が持つ(または後継者に早めに移す)ことで、法人に貯まった利益が親の相続財産にならない
- 法人の役員報酬を子や配偶者に払う場合、勤務や職務の実態が必要
- 管理料やサブリース料の水準は、第三者の管理会社の相場と比べて説明できるものにする
- 法人の設立・維持のコスト(登記費用、法人住民税の均等割、税理士報酬)を上回る効果があるか試算する
実務では、まず管理委託方式やサブリース方式で法人を作って実績を積み、物件の建替えや新規購入のタイミングで所有方式に移行する流れがよく見られます。どの方式が合うかは、物件の規模・築年数・家族構成によって変わります。無料相談で現状の家賃収入と物件の内容をお聞かせください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。