会社の配当や役員報酬で相続人の納税資金を準備する考え方|自社株の相続税を払うお金はどこから出すか

自社株の相続税は評価額が高いのに換金できず、納税資金の確保が課題になります。後継者を役員にして報酬を払う、株主である後継者に配当する、会社が後継者から株式を買い取る(金庫株)といった方法で、会社の資金を相続人の納税資金に変える考え方と、それぞれの税負担を比較します。

自社株の相続税は「評価額は高いのに、売ってお金に換えられない」という特有の問題があります。相続税は原則として現金で納めるため、相続人が納税資金を用意できなければ、延納や物納、最悪の場合は会社の資産を切り売りすることになります。この記事では、会社の資金を相続人の納税資金に変える3つの方法を比較します。

方法1:後継者への役員報酬で貯める

後継者を早い段階で役員にし、役員報酬を支払うことで、後継者自身の預金として納税資金を積み上げていく方法です。報酬は会社の損金になり、後継者には給与所得として所得税・住民税・社会保険料がかかります。

例:年間の役員報酬を600万円増やし、手取りが約400万円増えた場合 10年間で約4,000万円の納税資金が準備できます。

時間はかかりますが、勤務の実態があれば税務上の問題が少なく、後継者が経営に関与する仕組みとしても自然です。報酬の額は職務内容に見合った範囲にとどめます。

方法2:株主への配当で貯める

後継者がすでに株式を一部持っているなら、配当を支払って納税資金を準備する方法もあります。配当は会社の損金にならず、受け取った後継者には総合課税の配当所得(配当控除あり)がかかるため、役員報酬より税負担が重くなることが多いです。

また、配当を増やすと類似業種比準方式の配当要素が上がり、自社株の評価額が上昇します。納税資金の準備と株価対策が逆方向に働く点に注意が必要です。

方法3:相続後に会社が株式を買い取る(金庫株)

相続した株式の一部を会社に買い取ってもらい、その代金を納税に充てる方法です。通常、個人が発行会社に株式を売ると、資本金等を超える部分はみなし配当として総合課税されますが、相続税の申告期限から3年以内に相続した株式を発行会社に譲渡した場合は、みなし配当課税を受けず、全額が譲渡所得(20.315%の分離課税)として扱われる特例があります。さらに取得費加算の特例も併用できます。

方法 会社の税務 相続人の税務 株価への影響
役員報酬 損金(適正額の範囲) 給与所得 利益が減り株価は下がる方向
配当 損金にならない 配当所得(総合課税) 配当要素が上がり株価は上がる方向
金庫株(相続後3年以内) 自己株式の取得(分配可能額の範囲) 譲渡所得(特例でみなし配当なし) 発行済株式が減る

金庫株の計算例:相続税評価額1株5万円の株式を会社が1,000株買い取る場合 買取代金 = 5万円 × 1,000株 = 5,000万円 相続人の譲渡所得税 ≒(5,000万円 − 取得費 − 取得費加算額)× 20.315% 会社には5,000万円の分配可能額(剰余金)と資金が必要です。

組み合わせて考える

実務では、生前は役員報酬で後継者の資金を積み上げ、相続後に不足分を金庫株で補う、という組み合わせが現実的です。会社に金庫株の買取資金がない場合は、会社が生命保険に加入し、先代の死亡保険金を買取資金に充てる設計もよく使われます。遺族が受け取る死亡退職金(非課税枠あり)を納税資金にする方法も合わせて検討します。

納税資金の準備は、自社株の評価額を把握することから始まります。概算の税額を知ったうえで、何年かけてどの方法で準備するかを決めてください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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