非上場会社の株式は、相続する人が「経営に関わる同族株主」か「配当を受け取るだけの少数株主」かで評価の方法が異なります。従業員持株会の会員や、創業時に少しだけ出資した親戚などが亡くなった場合、配当還元方式というシンプルな方法で低く評価できるのが原則です。この記事では、その条件と計算を解説します。
配当還元方式とは
配当還元方式は、その株式から受け取れる配当の金額だけをもとに評価する方法です。計算式は次のとおりです。
評価額 =(直前2年間の平均配当 ÷ 10%)×(1株あたりの資本金等の額 ÷ 50円)
1株あたりの年配当が5円で、資本金等の額が1株50円の会社なら、 5円 ÷ 10% × 50円 ÷ 50円 = 1株50円 が評価額です。年配当が2円50銭未満(無配を含む)の場合は2円50銭として計算するため、評価額は最低でも25円(50円あたり)になります。
同じ会社の株式でも、同族株主が純資産価額方式で評価すると1株数千円になることが珍しくなく、配当還元方式との差は非常に大きくなります。
配当還元方式を使える株主
配当還元方式が使えるのは、株式を取得した人が「同族株主以外の株主」などに当たる場合です。おおまかには次のように判定します。
| 会社の状況 | 配当還元方式になる取得者 |
|---|---|
| 同族株主(議決権30%以上のグループ)がいる会社 | 同族株主以外の株主 |
| 同族株主がいる会社で、取得者が同族株主 | 取得後の議決権が5%未満で、役員でない等の一定の者(中心的な同族株主がいる場合) |
| 同族株主のいない会社 | 議決権15%以上のグループに属さない株主 |
判定は「相続した後の持株」で行います。従業員が持株会を通じて持つ株式は、通常は同族株主以外に当たるため、配当還元方式になります。ただし、相続人が社長の親族で、取得後に同族グループの一員になる場合は、原則どおりの評価になることがあります。
従業員持株会での実務
多くの持株会では、規約で「会員が死亡・退職したときは、持株会が出資額や一定の価格で買い戻す」と定めています。この場合、相続人が引き継ぐのは株式そのものではなく、持株会からの精算金です。精算金の額が評価額と異なる場合でも、相続税の申告は原則として相続開始時の評価額で行い、持株会の規約・会員名簿・精算の記録を確認して漏れなく計上します。
会社側から見た注意点
経営側から見ると、株式が社外の相続人に流出する懸念があります。定款に相続人に対する売渡請求の規定を置く、持株会の規約で買戻しを定めるといった備えが、会社の安定につながります。
少数株主の相続は税額としては小さいことが多いものの、株主の判定を誤ると評価が何十倍も変わります。株主名簿と会社の議決権の状況を確認したうえで申告してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。