相続人が海外に住んでいても、日本の不動産を相続して登記し、売却することはできます。ただし、印鑑証明書が取れない、売却代金から税金が天引きされる、申告の窓口になる人を決める必要があるなど、国内在住の相続人にはない手続きが加わります。順を追って確認しましょう。
相続登記に必要な書類
相続登記では、遺産分割協議書に相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付するのが原則です。海外在住で日本に住民票がない相続人は、代わりに次の書類を使います。
- 署名証明(サイン証明):現地の日本大使館・領事館で、遺産分割協議書に本人が署名したことを証明してもらう。協議書と一体で綴じる形式と、単独で発行する形式がある
- 在留証明:住所を証明する書類で、住民票の代わりになる
- 現地の公証人(Notary Public)の認証で代替できる場合もあるが、法務局によって扱いが異なるため事前に確認する
日本国籍を失っている相続人は在外公館の証明が使えないため、現地の公証人認証と翻訳文を用意します。相続登記は2024年4月から義務化されており、海外在住でも3年以内の申請が求められます。
売却時の10.21%の源泉徴収
非居住者が日本の不動産を売却した場合、買主が売買代金の10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)を源泉徴収して税務署に納付します。売主が受け取るのは残りの89.79%です。
例:売買代金 5,000万円 源泉徴収税額 = 5,000万円 × 10.21% = 510万5,000円 売主の受取額 = 4,489万5,000円
ただし、買主が個人で、本人または親族の居住用として購入し、代金が1億円以下の場合は源泉徴収の対象外です。源泉徴収された税額は、翌年の確定申告で実際の譲渡所得税と精算され、払い過ぎていれば還付されます。相続した不動産は被相続人の取得費を引き継ぐため、取得費が不明な場合は売却代金の5%で計算することになり、税額が大きくなりがちです。
納税管理人の届出
非居住者が日本で確定申告や納税を行うには、国内に住む人を納税管理人として税務署に届け出ます。親族でも税理士でも構いません。源泉徴収の還付金も納税管理人を通じて受け取ります。相続税の申告についても、海外在住の相続人は同様に納税管理人の届出が必要です。
売却を前提に相続する場合は、取得費加算の特例(申告期限から3年以内)や空き家特例が使えるかどうかで手取りが大きく変わります。売る前に無料相談で全体の税負担を試算することをおすすめします。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。