海外に財産を持つ方は、相続税とは別に「国外財産調書」や「財産債務調書」の提出義務があります。これらの調書は相続税の調査でも照合され、記載があれば加算税が軽減され、なければ加重されるという仕組みが相続税にも及びます。被相続人が提出していたかどうかは、相続人が必ず確認すべき事項です。
2つの調書の提出要件
| 調書 | 提出する人 | 期限 |
|---|---|---|
| 国外財産調書 | その年の12月31日に5,000万円を超える国外財産を持つ居住者(非永住者を除く) | 翌年6月30日 |
| 財産債務調書 | 所得2,000万円超かつ財産3億円以上(または有価証券等1億円以上)の人、または財産10億円以上の人 | 翌年6月30日 |
2023年分から提出期限が6月30日に延び、財産10億円以上の人は所得にかかわらず対象になりました。改正の内容は最新の情報を確認してください。
相続した年の特例
相続があった年は、相続した財産の内容を年末までに把握しきれないことがあります。そのため、相続開始年の調書では、相続した国外財産を除いて提出義務を判定し、記載も省略できる取り扱いがあります。翌年分からは相続財産を含めて判定・記載します。
加算税の加減算と相続税
国外財産に関して申告漏れがあった場合、過少申告加算税・無申告加算税が次のように調整されます。
- 調書に記載があった財産:加算税を5%軽減
- 調書を出していない、または記載がなかった財産:加算税を5%加重
相続税については、被相続人の調書と相続人の調書のどちらにも記載がない場合に加重され、いずれかに記載があれば軽減の対象になります。たとえば国外財産の申告漏れで本税200万円、過少申告加算税10%なら、通常20万円のところ、記載があれば10万円、なければ30万円になります。
さらに、調書を提出していない人が税務調査で資料の提示を求められ、期限までに出さなかった場合、加重の割合が上がる規定もあります。
実務上の対応
- 被相続人の過去の提出状況は、申告書の控えや税理士への確認、税務署での閲覧で確認する
- 被相続人が提出すべきだったのに出していなかった場合でも、相続税の申告は正確に行う。未提出の事実は相続税の申告義務を変えない
- 相続人自身が要件に該当する場合は、相続の翌年分から調書の提出が必要になる
CRS(共通報告基準)により海外口座の情報は各国の税務当局間で交換されており、海外の財産は「見つからない」前提で考えるべきではありません。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。