自宅は生前に売る?相続後に売る?3,000万円控除・取得費加算・空き家特例の比較

親の自宅を生前に売れば居住用の3,000万円控除と軽減税率が使えますが、現金化すると相続税評価の圧縮効果を失います。相続後の売却では取得費加算か空き家特例を選び、小規模宅地等の特例も使えます。所得税・相続税・納税資金の視点で比較します。

親が住んでいる自宅を、親が元気なうちに売るのと、相続してから売るのとでは、使える特例が変わります。所得税だけでなく、相続税評価の違いや納税資金への影響も含めて、どちらが有利かを考える視点を整理します。

生前に売る場合:居住用3,000万円控除と軽減税率

親自身が住んでいる自宅を売れば、居住用財産の3,000万円特別控除が使えます。所有期間が10年を超えていれば、控除後の6,000万円以下の部分に軽減税率(所得税・住民税で約14%)が適用されます。

例:取得費不明の自宅(売却額5,000万円)を親が売却 譲渡所得 5,000万円−5,000万円×5%(概算取得費)−譲渡費用150万円=4,600万円 3,000万円控除後 1,600万円 → 軽減税率約14%で約224万円

売却後の現金は相続財産になります。不動産のままなら相続税評価額(時価の7〜8割)や小規模宅地等の特例で評価が下がりますが、現金はそのまま100%評価です。相続税の面では不利になりやすい点に注意が必要です。

相続後に売る場合:取得費加算と空き家特例

相続人は親の自宅に住んでいなければ、居住用の3,000万円控除は使えません。代わりに次の特例があります。

  • 取得費加算の特例: 相続税の申告期限から3年以内に売れば、その不動産にかかった相続税額を取得費に加算できる
  • 空き家の3,000万円特別控除: 1981年5月31日以前に建てられた家で、親が一人暮らしだったなどの要件を満たし、耐震改修または取壊しをして売却。2027年12月31日までの売却が対象(相続人が3人以上なら控除額は2,000万円)

取得費加算と空き家特例は併用できず、どちらか有利な方を選びます。相続時は小規模宅地等の特例(同居親族や家なき子の要件を満たせば80%減額)を使えるため、相続税の面では相続後売却が有利なことが多くなります。

判断の視点

視点 生前売却 相続後売却
所得税の特例 3,000万円控除・軽減税率 取得費加算または空き家特例
相続税評価 現金で100% 不動産評価+小規模宅地等
納税資金 確保しやすい 売却まで不足することも
親の生活 住み替え先が必要 変化なし

親が施設に入るため自宅を手放す場合、生前売却の3,000万円控除は住まなくなってから3年目の年末までの売却が条件です。この期限を過ぎてから相続が起きると、空き家特例の要件(親が居住していたこと。老人ホーム入所には例外あり)の確認が必要になります。

売却の時期は税金だけでなく、親の生活と家族の意向で決まります。両方の税額を試算して比較することをおすすめします。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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