非上場会社の株式(自社株)は、評価額が会社の業績で大きく変わります。贈与税は贈与時の評価額で計算されるため、評価が下がった時期を選んで贈与すると、同じ株数でも税額が大きく変わります。評価を下げる考え方と、少数株主への配当還元方式について解説します。
評価は「直前期」の数字で決まる
同族株主が取得する自社株は、会社の規模に応じて類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせて評価します。類似業種比準価額は、1株当たりの配当・利益・純資産の3要素を上場企業の平均と比べて算出するため、利益が落ちた期の後は評価が下がります。
贈与の場合、評価の基礎になる決算は贈与日の直前期(直前に終了した事業年度)です。そのため、評価が下がる要因を作った事業年度の決算が確定した後に贈与するのが基本です。
評価が下がる典型的な場面
- 役員退職金を支給した期の翌期(利益と純資産が減る)
- 大型の設備投資や修繕で一時的に利益が落ちた期の翌期
- 記念配当を除いた経常的な配当が低い(または無配の)期
- 不動産の含み損がある場合の純資産価額
例:1株の評価が10,000円から6,000円に下がったとき、2,000株を贈与すると評価額は2,000万円から1,200万円になります。相続時精算課税を使えば特別控除2,500万円の範囲内で贈与税は0円で、相続時にも1,200万円の価額で固定されます。
配当還元方式での贈与
同族株主以外の少数株主(議決権割合5%未満の役員でない従業員など)が取得する株式は、配当還元方式という簡易な方法で評価できます。計算式は 年配当金額÷10%×(1株当たりの資本金等の額÷50円) です。配当が年2円50銭未満や無配なら2円50銭として計算するため、評価額が極めて低くなります。
ただしこの方式は、取得後も少数株主であることが前提です。後継者の子が取得すると同族株主として原則的評価になるため、配当還元は「従業員持株会への譲渡」や「親族外の協力者への分散」に使われます。後で支配株主に買い戻されると、その時点で原則的評価との差が問題になります。
注意点
意図的に評価を下げる行為(不相当に高い退職金など)は否認されることがあります。また、贈与で後継者に株を集めるなら、事業承継税制(特例措置は2027年12月末まで)や遺留分への配慮もあわせて検討してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。