相続税の納付資金が足りないとき、延納のほかに**金融機関の「相続税納税資金ローン」**を使う方法があります。延納は利子税が低い一方で手続きが重く、ローンは手続きが速い一方で金利が高めです。どちらが有利かは、不動産の割合と、相続した財産を売る予定があるかで変わります。
延納とローンの比較
| 比較項目 | 延納 | 納税資金ローン |
|---|---|---|
| 利率 | 利子税。特例割合で年0.4〜1%程度(年により変動) | 金融機関の金利。年1〜3%程度が多い(審査・担保で変動) |
| 期間 | 財産構成により5〜20年 | 金融機関の商品による(数年〜20年程度) |
| 担保 | 100万円超または3年超なら必要(不動産・有価証券・保証人) | 原則として不動産担保または保証 |
| 手続き | 申告期限までに申請。審査3か月(最長6か月) | 申告期限までに実行できれば足りる。審査は数週間程度 |
| 途中返済 | 繰上げ納付は自由。以後の利子税なし | 繰上げ返済手数料がかかることがある |
| 審査の基準 | 金銭納付困難の要件(相続した預貯金・自己資金では納められないこと) | 返済能力・担保価値 |
利率だけを見れば延納の方が低いのが通常です。ただし、延納は「金銭納付が困難な金額」の範囲でしか認められず、相続人自身の預貯金も生活費を除いて納税に充てることが前提です。手元資金を残したい場合は、延納の要件を満たさないことがあります。
ローンが向いているケース
- 相続した不動産を1〜2年以内に売却する予定があり、売却代金で一括返済できる(延納は担保の設定・解除の手間がかかる)
- 申告期限が迫っていて、延納の申請書類(担保関係書類)を整える時間がない
- 延納の金銭納付困難の要件を満たさないが、手元資金を取り崩したくない
延納が向いているケース
- 相続財産に占める不動産の割合が高く、長期間の低い利子税で払いたい
- 相続した不動産を長く持ち続ける予定である
- 担保にできる土地があり、申告期限までに申請の準備ができる
共通する注意点
- 延納の利子税もローンの利息も、所得税の必要経費にはなりません
- 相続した財産を売却して返済する場合、取得費加算の特例(申告期限から3年以内の売却)を使うと譲渡所得税を抑えられます
- ローンを相続人の一人が借りて他の相続人の税額を払うと、贈与とされる可能性があります。各自が自分の税額分を借りるか、立替の精算を明確にしてください
どちらを選ぶ場合も、申告期限の3か月前には方針を決める必要があります。相続税シミュレーションで税額の概算を把握したうえで、納税方法の検討を始めてください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。