賃貸不動産を相続すると、遺産分割がまとまるまでの間も家賃は毎月入ってきます。「最終的にアパートを相続した人のもの」と思われがちですが、法律上の扱いは違います。この記事では、分割前の家賃の帰属と、所得税の申告をどうするかを整理します。
最高裁の考え方
遺産分割は相続開始の時にさかのぼって効力を持つ(民法909条)ため、分割前の家賃も取得者のものになりそうに見えます。しかし最高裁は、相続開始後に生じた家賃は遺産そのものではなく、遺産とは別個の財産として、各共同相続人が相続分に応じて確定的に取得するもので、後の遺産分割の影響を受けないという判断を示しています(平成17年の判決)。
つまり、相続人が妻と子2人で、分割前の家賃が月30万円なら、妻15万円・子それぞれ7万5,000円ずつが各人のものになります。1年後に長男がアパートを相続することになっても、その1年分を長男に渡す義務は法律上ありません。
所得税の申告は各相続人が行う
税務上もこの考え方に沿って、分割前の不動産所得は法定相続分に応じて各相続人が申告します。遺産分割が確定した後に、さかのぼって取得者一人の所得に修正することはしません。
- 相続開始の翌日から分割確定日まで:法定相続分で各相続人の所得
- 分割確定日の翌日以降:取得した相続人の所得
実際の入金が代表者の口座に集まっていても、所得の帰属は変わりません。代表者が全額を自分の所得として申告すると、相続人全体で見て税率の高い人に所得が集まり、損をすることもあります。
相続人の合意で変えられるか
家賃を実際にどう分配するかは、相続人全員の合意で決めることができます。たとえば「分割前の家賃もアパートの取得者が全部受け取る」と合意すれば、民事上は有効です。ただし税務上は、各相続人が法定相続分で取得した家賃を取得者に渡したものと見られ、金額によっては贈与税の問題が生じます。所得税の申告だけ法定相続分で行い、お金の精算は別に行うなど、実務では扱いを分けて考えます。
実務上の対応
分割前の家賃は、相続人代表の専用口座で受け取り、固定資産税や修繕費などの経費も同じ口座から支払って記録を残しておきます。年が明けたら収支を法定相続分で按分して各相続人に渡し、それぞれが確定申告します。期間が長引きそうなら、先にアパートだけ一部分割して取得者を決めるのも有効です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。