兄弟の誰も農業をしない、親の代で農業は終わり、という家で相続した農地は、現金にもならず手放すのにも手間がかかる財産です。結論から書くと、出口は「貸す・売る・国に返す・相続自体を放棄する」の4つで、農地バンクへの貸付け → 近隣農家への売却 → 国庫帰属の順に検討し、相続放棄は他の財産も失うため最後の手段です。
4つの出口の比較
| 出口 | 手続き | 費用・条件 | 残る負担 |
|---|---|---|---|
| 農地バンクに貸す | 機構へ申込み、借り手とのマッチング | 無料。借り手がつかないことがある | 所有は続き固定資産税は所有者負担(賃料で相殺) |
| 農家に売る | 農地法3条の許可(買い手は農業者) | 価格は農地としての水準。買い手を探す必要 | なし |
| 国庫帰属 | 法務局へ承認申請 | 審査手数料1筆14,000円+負担金 | なし |
| 相続放棄 | 家庭裁判所へ3か月以内 | 預金・自宅など他の財産も放棄 | 引き渡すまでの保存義務 |
農地バンクに貸す・農家に売る
農地中間管理機構は都道府県ごとに置かれ、農地を借り受けて地域の担い手にまとめて貸す仕組みです。農地法3条の許可を個別に取る必要がなく、借り手の管理や賃料の回収も機構が担うため、遠方に住む相続人にも向いています。ただし、小さく分散した畑や水はけの悪い田は借り手がつかないことがあります。市街化区域の農地は原則として機構の貸付けの対象外のため、生産緑地なら都市農地貸借法の認定貸付けを検討します。
農地のまま売るには農地法3条の許可が必要で、買い手は農業を営む個人や法人に限られます。2023年4月に取得時の下限面積の要件は廃止されましたが、買い手が農業に必要な機械や労働力を持ち、周辺の農地利用に支障がないことなどの要件は残っています。価格は農地としての取引水準で、市街化区域の宅地のようには売れません。農業委員会や農地バンクに「売りたい」と登録し、担い手を探してもらうのが現実的です。
国に返す(相続土地国庫帰属制度)
農地も国庫帰属の対象です。ただし、境界が明らかであること、ハウスや倉庫などの工作物や果樹が残っていないこと、土壌汚染がないこと、他人が使う通路や水路が含まれないことなどの要件があります(国庫帰属制度の要件と負担金)。負担金は原則20万円ですが、市街化区域や農用地区域内の農地は面積に応じて計算され、1,000㎡なら100万円前後になることもあります。審査には時間がかかり、申請すれば引き取られると決まっているわけではありません。
相続放棄との比較と、持ち続ける場合
相続放棄は、相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述し、農地だけでなく預金や自宅も含めてすべてを放棄します(相続放棄の3か月)。農地だけを手放したい場合には向きません。また、放棄しても現に占有している農地は、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が残ります。
持ち続ける場合、調整区域の農地の固定資産税は年に数千円から数万円で、負担そのものは小さいことが多いです。ただし耕作をやめて遊休農地と判断され、農業委員会の勧告を受けると負担が重くなります。草刈りを頼む費用もかかるため、「安いから持っておく」なら管理の費用まで見込みます(農業を継がない相続人の選択肢)。
どの出口を選んでも、相続税は相続開始時の評価額で申告します。当センターでは、耕作しない農地も含めた土地一覧と相続税の試算を行い、出口ごとの費用の目安もお伝えしています。相続税申告は基本報酬99,000円(税込・遺産総額4,000万円まで)から、土地評価は1か所110,000円(税込)から、初回相談は無料です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。