タワーマンションの高層階は、市場価格に比べて相続税評価額が極端に低くなることから、相続対策に使われてきました。2024年1月1日以降の相続・贈与からは評価方法が改正され、市場価格との乖離が大きい物件は評価額が引き上げられています。改正の内容と、売却時の時価との関係を整理します。
改正の仕組み
区分所有マンション(居住用)の評価は、従来どおり「建物の固定資産税評価額」と「敷地権の路線価評価」を基本としつつ、次の4つの要素から「評価乖離率」を計算し、評価額を補正します。
- 築年数(古いほど乖離率が下がる)
- 総階数(高層ほど乖離率が上がる)
- 所在階(上の階ほど上がる)
- 敷地持分狭小度(1戸あたりの敷地持分が小さいほど上がる)
評価乖離率の逆数が「評価水準」で、評価水準が0.6未満なら、従来の評価額に評価乖離率×0.6を掛けて引き上げます。評価水準が0.6以上1以下なら補正なし、1を超える(評価額が時価より高い)場合は評価乖離率を掛けて引き下げます。つまり、市場価格のおおむね60%になるよう調整する仕組みです。
計算例
従来の方法による評価額が3,000万円、評価乖離率が2.5(評価水準0.4)のタワーマンション高層階の場合 補正後の評価額=3,000万円×2.5×0.6=4,500万円
従来の評価なら3,000万円だったものが4,500万円になります。評価乖離率は国税庁が公表している計算式で、築年数などの数値を入れれば自分で算出できます。
売却時の時価との関係
改正後も、評価額は市場価格の60%程度を目指す設計のため、時価が7,500万円の部屋の評価額は4,500万円前後にとどまります。現金で持つより評価が下がる効果はなお残っていますが、改正前の「時価の3割以下」という極端な圧縮はできなくなりました。
相続後に売却する場合の譲渡所得は、売却価額から被相続人の取得費を引いて計算するため、相続税評価額とは無関係です。相続税を納めていれば、申告期限から3年以内の売却で取得費加算の特例が使えます。
改正後の注意点
- 2階建て以下の建物や、一棟全体を所有している場合は対象外
- 相続直前に購入し相続直後に売却するような場合は、改正後の評価でも「著しく不適当」として時価で評価し直される可能性が残る
- 賃貸中の部屋は、補正後の評価額に貸家・貸家建付地の減額を適用する
タワーマンションの購入を相続対策として検討している方は、改正後の評価額と購入後の価格下落リスクを合わせて試算する必要があります。所有している方は、相続税シミュレーションで改正後の評価額を前提に税額を確認しておきましょう。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。