夫が契約者で妻が被保険者の終身保険、父が契約者で子が被保険者の保険など、契約者だけが亡くなった契約は、解約しなくても相続人が契約者を引き継いで続けられます。保障を残したい場合の手続きと、相続税・その後の課税を整理します。
相続税の評価と申告
契約者の死亡時点で被保険者は存命なので、保険金は出ません。この契約は「生命保険契約に関する権利」として、死亡日時点の解約返戻金相当額(前納保険料や配当金があれば加算)で評価し、本来の相続財産として申告します。非課税枠は使えません。
保険会社に死亡日時点の「相続税申告用の解約返戻金証明書」を依頼し、その額を申告書の財産欄に記載します。
引き継ぐ人を決めて名義変更する
契約を引き継ぐ人は遺産分割協議で決めます。被保険者本人(妻や子)が契約者になるのが一般的で、その場合、契約者=被保険者の形になります。
- 遺産分割協議書に「生命保険契約(〇〇生命、証券番号〇〇)に関する権利は〇〇が取得する」と記載する
- 保険会社に「契約者死亡による名義変更」の請求書、戸籍、協議書の写し、新契約者の本人確認書類を提出する
- あわせて死亡保険金の受取人を見直す(受取人が亡くなった契約者のままになっていることが多い)
- 保険料の引落口座を新契約者の口座に変更する
受取人が亡くなった契約者のままだと、将来の保険金が受取人の相続人に分散して支払われることになり、意図しない結果になります。名義変更の際に必ず確認してください。
引き継いだ後の課税
| 場面 | 課税 |
|---|---|
| 名義変更の時点 | 相続税(評価額を申告済みなら追加の税はない) |
| 新契約者が解約・満期金を受け取る | 新契約者の一時所得 |
| 被保険者(新契約者)が死亡し、子などが保険金を受け取る | 新契約者の相続で死亡保険金として相続税(非課税枠あり) |
一時所得の計算では、亡くなった契約者が払った保険料も必要経費に含めることができます。たとえば妻が契約者を引き継いで数年後に解約し、解約返戻金700万円、夫と妻の払込保険料合計650万円なら、(700万円-650万円-50万円)×1/2=0円で、所得税はかかりません。
注意点
- 保険会社は契約者の死亡による名義変更を税務署に支払調書で報告しています。申告漏れは把握されやすい項目です
- 相続放棄をした人は、生命保険契約に関する権利を引き継ぐことはできません(遺産だからです)
- 保険料負担が重い場合は、払済保険への変更(以後の保険料を払わずに保障を減額して続ける)という選択肢もあります
続けるか解約するかにかかわらず、死亡日時点の評価額の申告は必要です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。