小さな会社では退職金規程を作っていないことが珍しくありません。社長や役員が亡くなったときに、規程がないまま遺族にまとまったお金を支給した場合、それは死亡退職金として扱えるのか、相続税と法人税の両面から整理します。
規程がなくても「退職金」になる
相続税法でいう退職手当金等は、「被相続人の死亡により支給される退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与」です。規程の有無は要件ではなく、死亡後3年以内に支給が確定していれば、名目が功労金や慰労金でも実質が退職金であれば該当します。役員の場合は株主総会(または取締役会)の決議で支給が確定し、その議事録が確定日の根拠になります。
該当すれば、500万円×法定相続人の数の非課税枠が使えます。たとえば法定相続人が配偶者と子1人の2人なら、1,000万円までは相続税がかかりません。
規程がないときに問題になる「適正額」
規程がない場合、会社側で損金にできる額の判定がより重要になります。法人税では、退職金のうち不相当に高額な部分は損金にできません。目安として使われるのが「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」という計算で、功績倍率は役職や会社の規模に応じて判断されます。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 最終報酬月額 | 80万円 |
| 在任年数 | 25年 |
| 功績倍率 | 3.0 |
| 目安額 | 80万円×25年×3.0=6,000万円 |
これを大きく超える支給は、超えた部分が損金否認されるおそれがあります。遺族側の相続税では、過大とされた部分も退職手当金等として課税対象になるのが一般的です。
弔慰金との区分と遺族の受取人
規程がないと「退職金」と「弔慰金」の区分も曖昧になります。弔慰金は普通給与の6か月分(業務上の死亡は36か月分)まで相続税の対象外なので、決議の際に退職金と弔慰金を分けて金額を明記しておくと、申告で迷いません。
また、規程で受給権者が決まっていれば受け取る人の固有財産とされますが、規程がない場合は、誰が受け取るのかを決議で明確にしないと遺産分割の対象になるかどうかで争いになることがあります。決議書には「配偶者〇〇に対して死亡退職金として〇〇円を支給する」のように支給先を特定しておきましょう。
同族会社の経営者の相続では、退職金の額の決め方で相続税・法人税の両方が変わります。株主総会の前に無料相談で試算しておくことをおすすめします。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。