相続税の財産評価は、国税庁の「財産評価基本通達」に従って行うのが実務の原則です。しかし、通達の最初の部分には「総則6項」と呼ばれる規定があり、通達どおりに評価することが著しく不適当な場合には、通達によらず別の方法(時価)で評価できるとされています。節税目的の不動産購入が問題になるのは、この規定が根拠です。
総則6項の内容
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する
通達の評価方法は、多くの財産を公平かつ簡便に評価するための「ものさし」です。しかし、そのものさしを使うと明らかに実態とかけ離れた評価になり、他の納税者との公平を害する場合には、例外的に時価(不動産鑑定評価額など)で評価する、という趣旨です。
2022年の最高裁判決
2022年4月の最高裁判決で、総則6項の適用が認められた事案が広く知られています。高齢の被相続人が相続の数年前に多額の借入れで賃貸マンションを購入し、通達による評価額と借入金の債務控除によって相続税がほぼゼロになった事案です。
最高裁は、通達による評価が時価を下回ること自体は問題ではないとしつつ、相続税の負担を減らすことを意図して行われた購入と借入れによって、同じような財産を持つ他の納税者との間に看過しがたい不均衡が生じ、租税負担の公平に反するという「特段の事情」がある場合には、通達と異なる評価が認められると判断しました。
適用されやすい状況
判決や過去の事例から、次のような要素が重なると適用のリスクが高いと考えられています。
- 被相続人が高齢または病気で、相続の発生が近い時期に行われた取得
- 取得資金の大部分が金融機関からの借入れで、融資の稟議書などに「相続対策」と記載されている
- 通達評価額と購入価額(時価)の差が極めて大きい(数倍以上)
- 相続の直後に売却されている
- その取得によって相続税の負担が大幅に減少、またはゼロになっている
一方、長年保有している賃貸不動産や、事業や居住の必要性から取得した不動産が、評価額と時価に差があるというだけで否認されるわけではありません。
対策の考え方
不動産の購入が相続対策として有効であること自体は変わりません。しかし、「税負担を減らす目的だけ」の取引と見られないよう、賃貸経営としての合理性、取得から相続までの期間、資金計画の妥当性を備えておくことが重要です。否認されると加算税・延滞税も生じるため、極端な対策は避けるべきです。
不動産を使った対策を検討している方は、無料相談で、評価額と時価の差がどの程度か、リスクのある取引に当たらないかをご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。