「海外の口座は日本の税務署には分からない」という時代は終わっています。国外送金等調書、CRS(共通報告基準)による口座情報の自動交換、国外財産調書の3つの仕組みで、海外の資産は相続税の申告と照合されます。海外に財産がある相続では、把握される仕組みを前提に、正確に申告することが必要です。
把握される3つの仕組み
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 国外送金等調書 | 100万円を超える海外への送金・海外からの受取について、金融機関が税務署に提出。送金者・受取人・金額・目的が分かる |
| CRS情報 | 海外の金融機関が、日本居住者の口座の残高・利子・配当などを自国の税務当局に報告し、日本の国税庁へ毎年自動で提供される。100を超える国・地域が参加 |
| 国外財産調書 | 12月31日時点で5,000万円を超える国外財産を持つ居住者が、翌年に自ら提出する |
税務署は、被相続人の過去の送金記録やCRS情報から海外口座の存在を知り、相続税申告書に記載がなければ照会や調査を行います。
相続税で課税される範囲
被相続人または相続人が日本に住んでいる場合(一時的な居住者などの例外を除く)、国内・国外を問わずすべての財産が相続税の対象です。海外の預金は相続開始日の為替レート(対顧客直物電信買相場)で円換算し、海外の不動産は現地の時価や鑑定評価などを参考に評価します。外国で相続税に相当する税金を納めた場合は、外国税額控除(第8表)で二重課税を調整します。
申告書での書き方
- 第11表に、財産の種類ごとに所在地(国名・金融機関名・支店)を明記して記載する
- 外貨建ての財産は、外貨額と換算レート・円換算額を併記する
- 海外の金融機関の残高証明や取引明細(英文のものは必要に応じて訳文)を保管する
- 海外の生命保険、年金、投資信託も「みなし相続財産」や有価証券として計上する
国外財産調書と加算税の関係
被相続人が国外財産調書を提出していたかどうかで、申告漏れがあったときの加算税が変わります。
- 調書に記載されていた国外財産の申告漏れ:過少申告加算税が5%軽減
- 調書を提出していない、または記載がない国外財産の申告漏れ:過少申告加算税が5%加重
さらに、相続人が調書の提出者になる場合は、相続した年の調書には相続財産を含めなくてもよい特例があります。
実務上の対応
海外の口座は、相続人が存在を知らないこともあります。被相続人の通帳に海外送金の記録、外貨の入出金、海外の金融機関からの郵便物がないかを確認し、心当たりがあれば早めに調べてください。海外財産の相続は、現地の相続手続きにも時間がかかるため、申告期限から逆算した準備が欠かせません。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。