会社の社長が亡くなったとき、遺族は相続の手続きに追われますが、会社の側でも待ったなしの手続きがあります。代表者が不在のままでは契約も支払いも止まってしまうため、相続の手続きと並行して会社の体制を整える必要があります。この記事では、会社側で行う主な手続きを時系列で解説します。
後任の代表者を決めて登記する
取締役は死亡によって当然に退任し、代表取締役の地位も失われます。会社としては次の流れで後任を決めます。
- 残っている取締役が複数いて取締役会設置会社なら、取締役会で新たな代表取締役を選定する
- 取締役が一人だけ、あるいは法律や定款で定めた人数を下回る場合は、株主総会で取締役を補充してから代表者を選ぶ
- 死亡の日から2週間以内に、法務局で役員の死亡の登記と新代表者の就任登記を申請する
ここで問題になるのが、株主総会を開くための株主です。社長が株式の大半を持っていた場合、その株式は相続人の共有(準共有)になり、権利行使者を決めないと議決権を行使できません。相続人の間で意見が分かれると、後任の代表者すら決められない事態になります。
税務署・自治体・金融機関への届出
| 届出先 | 内容 |
|---|---|
| 税務署・都道府県・市区町村 | 異動届出書(代表者変更) |
| 年金事務所 | 事業所関係変更届、被保険者資格喪失届 |
| 金融機関 | 代表者変更の届出、口座の届出印・インターネットバンキングの管理者変更 |
| 許認可の監督官庁 | 建設業・運送業・宅建業などは代表者や管理者の変更届 |
| 取引先・保険会社 | 契約の名義や担当者の変更 |
許認可事業では、亡くなった社長が専任技術者や管理者を兼ねていたケースが多く、要件を満たす後任がいないと許可の維持に関わります。
死亡退職金と弔慰金の決議
役員の退職金は、定款に定めがなければ株主総会の決議で支給額を決めます。決議の内容は議事録に残し、支給額は「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」などの基準で説明できる水準にしておきます。
相続税では、死亡退職金は「500万円×法定相続人の数」まで非課税です。弔慰金は、業務上の死亡なら報酬月額の3年分、業務外なら半年分までが非課税で、それを超える部分は退職金として扱われます。
社長個人と会社の間の整理
社長が会社に貸していたお金(役員借入金)は相続財産、会社が社長に貸していたお金(役員貸付金)は相続債務になります。社長が会社の借入金の連帯保証人だった場合、保証人の地位も相続の対象です。
社長の相続は、会社の手続き・相続税・自社株の評価が絡み合います。早めに税理士へ相談し、会社の顧問税理士と相続税の専門家が連携して進めると安心です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。