社長が亡くなった後の自社株の議決権はどうなる?準共有と権利行使者の指定、経営停滞のリスク

社長が亡くなると、自社株は遺産分割が終わるまで相続人全員の準共有になり、会社に権利行使者を届け出なければ議決権を行使できません。権利行使者は持分の過半数で決めますが、相続人が対立すると役員の選任や決算承認が止まります。備えを解説します。

会社の株式の大半を持っていた社長が亡くなると、「誰が議決権を行使するのか」が最初の問題になります。遺産分割で株式の取得者が決まるまで、株式は相続人全員で「準共有」する状態になり、そのままでは株主総会で一票も投じられません。この記事では、準共有の仕組みと、経営の停滞を防ぐ方法を解説します。

相続した株式は「準共有」になる

預金のように分けられる財産と違い、株式は遺産分割が終わるまで相続人全員が法定相続分の割合で共有する状態になります。例えば、社長が発行済株式1,000株のうち800株を持っていて、相続人が妻と子2人なら、800株を妻1/2、子それぞれ1/4の割合で準共有します。1株ずつ分かれるのではなく、800株全体を3人で持つ形です。

会社法では、共有している株式について議決権を行使するには、共有者の中から権利行使者を一人決めて会社に通知しなければならないとされています。通知がなければ、会社の側が同意しない限り、その株式の議決権は行使できません。

権利行使者はどう決める?

権利行使者は、共有者の持分の価格に従って過半数で決めることができるとされています。上の例では、妻(1/2)と子の一人(1/4)が合意すれば3/4で過半数になり、権利行使者を指定できます。全員一致は必要ありません。

逆に、妻が1/2、子2人が合わせて1/2で意見が割れると過半数に届かず、権利行使者を決められません。その間、会社では次のようなことが起きます。

  • 後任の取締役や代表取締役を選任する株主総会が成立しない
  • 決算の承認や役員報酬の決定ができない
  • 金融機関が代表者不在を理由に融資の実行や更新を保留する
  • 取引先への説明が難しくなり、信用が揺らぐ

経営停滞を防ぐための備え

生前にできる対策としては、次のものが代表的です。

  1. 遺言で株式の取得者を指定する:遺言で後継者に株式を相続させると定めておけば、準共有の状態を経ずに後継者が単独で株主になります
  2. 生前贈与で後継者に移しておく:相続時精算課税や事業承継税制を使い、元気なうちに株式を移転する
  3. 定款で相続人に対する売渡請求を定める:会社が相続人から株式を買い取れる規定を置く(後継者が相続人の一人の場合は使い方に注意が必要です)
  4. 種類株式や信託で議決権の行き先を決めておく

相続が起きてしまった後でも、相続人の間で早めに権利行使者を決め、暫定的に会社を動かしながら遺産分割を進めることは可能です。自社株の評価額は相続税にも直結するため、分割の方針と税額を同時に検討することをおすすめします。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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