同族会社の社長の財産は、会社と密接に絡み合っています。「会社のもの」と「社長個人のもの」の境目があいまいなまま相続を迎えると、相続財産の計上漏れや、逆に会社の財産を相続財産に含めてしまう誤りが起きます。この記事では、相続税の申告でよく問題になる3つの財産を取り上げ、整理の考え方を解説します。
1. 社長が会社に対して持つ債権
| 債権の種類 | 相続財産になるか |
|---|---|
| 会社への貸付金(役員借入金) | なる。原則として額面で評価 |
| 未払いの役員報酬・未収の地代家賃 | なる。相続開始日までに確定した分 |
| 社長が立て替えた経費の未精算分 | なる。帳簿で確認できる範囲で計上 |
| 会社が社長に支払う死亡退職金 | みなし相続財産(非課税枠あり) |
会社の決算書の「役員借入金」「未払金」「仮受金」の科目を相続開始日時点で確認し、社長に対する分を抜き出します。会社の帳簿が相続開始日で締められていないときは、直近の試算表に相続開始日までの取引を加えて把握します。会社の資金繰りが悪く回収できない場合でも、額面評価が原則で、減額が認められるのは会社が法的整理の手続きに入っているなど限られた場合です。
2. 会社が契約者の生命保険
会社が契約者・保険料負担者で、社長を被保険者とする生命保険は、保険金の受取人が誰かで扱いが分かれます。
- 受取人が会社:保険金は会社の収入で、相続財産ではない。会社はその資金で死亡退職金を支払うことが多く、遺族が受け取る退職金がみなし相続財産になる
- 受取人が遺族:会社が保険料を負担しているため、受け取った保険金は死亡退職金として扱われ、「500万円×法定相続人の数」の退職金の非課税枠の対象になる
また、社長個人が契約者で会社を受取人にしているケースや、保険料を会社と個人で分担しているケースでは、保険料負担の割合に応じて課税関係を分けることになります。保険証券と保険料の支払元(会社の口座か個人の口座か)を確認してください。
3. 会社名義の車両・社長名義で会社が使っている財産
会社名義の車を社長が通勤や私用に使っていても、所有者は会社なので相続財産ではありません。逆に、社長個人名義の車を会社が営業に使っている場合は相続財産です。名義で判断するのが原則ですが、購入代金の負担者が名義と異なる場合は、実質的な所有者で判断されることがあります。
- 社長個人が買った美術品やゴルフ会員権を会社が計上している
- 会社が買った備品を社長の自宅で使っている
- 社長の自宅の一部を会社の事務所として使い、家賃のやり取りがない
こうした状況は、相続税の申告で財産の帰属を説明しにくく、税務調査でも確認されやすいポイントです。
生前にできる整理
会社と個人の間の貸し借りは、毎年の決算で残高を確認し、返せるものは返し、必要なら債務免除や貸付金の贈与を進めます。名義と実質が食い違う財産は、売買や名義変更で一致させておきます。会社名義の保険は、受取人と保険料負担を整理し、退職金規程と合わせて見直しておくと、相続のときに迷いがなくなります。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。