「自分が先に亡くなったら、この子はどうなるのか」。高齢の飼い主にとって切実な問題です。法律上、ペットは財産を受け取る主体になれず、相続人にはなれません。そこで、信頼できる人に飼育を条件として財産を渡す仕組みが使われます。代表的なのが負担付遺贈とペット信託で、どちらにも相続税・贈与税の論点があります。
ペットそのものの扱い
民法上、ペットは「動産」として相続財産に含まれます。相続税の評価は、一般的な家庭の犬猫であれば市場価値がほとんどないため、家庭用財産に含めるか評価額をゼロに近い金額とします。血統書付きの繁殖用の動物や競走馬のように取引価格があるものは、売買実例価額で評価します。
負担付遺贈:飼育を条件に財産を遺す
遺言で「○○に金500万円を遺贈する。○○はペットの飼育を終生行うものとする」と定める方法です。受遺者(財産を受け取る人)は飼育義務を負い、履行しなければ相続人が遺言の取消しを家庭裁判所に請求できます。
税務上は、受遺者が取得した財産から負担の額を差し引いた額が相続税の課税対象になります。飼育費用は見積もりに幅があり、実務では「月○万円×見込み年数」といった合理的な算定が必要です。
例:遺贈額 500万円、飼育費の見積もり 月2万円 × 12か月 × 10年 = 240万円 課税対象 = 500万円 − 240万円 = 260万円
受遺者が相続人以外(友人や甥姪など)の場合は、相続税の2割加算の対象になります。負担付遺贈は受遺者が放棄できるため、事前に本人の承諾を得ておくことが不可欠です。
ペット信託:飼育費を分けて管理する
信託は、飼い主(委託者)が飼育費相当の財産を受託者(家族や法人)に託し、受託者が飼育者に費用を支払う仕組みです。負担付遺贈と違い、お金を飼育者に一括で渡さないため、使い込みを防ぎ、飼育状況を監督する人(信託監督人)を置くこともできます。
課税関係は次のとおりです。
- 飼い主の生前に信託を設定し、飼い主自身が受益者であれば、設定時に課税はない
- 飼い主の死亡で飼育者が受益者になると、その時点で受益権に相続税がかかる
- ペットが死亡して信託が終了したとき、残った財産を受け取る人(帰属権利者)に相続税または贈与税がかかる
契約書の作成や受託者の選定に専門家の関与が必要で、費用もかかるため、残す財産の規模とのバランスで検討します。
実務上のポイント
いずれの方法でも、飼育者本人の同意、飼育費の現実的な見積もり、飼育者が先に亡くなった場合の予備の指定が欠かせません。ペットの引取りを行う団体へ寄附とセットで依頼する方法もあり、生前対策として遺言全体の設計の中で無料相談にてご検討ください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。