借金が多くて相続放棄をするとき、「保険金や年金も受け取れなくなるのでは」と心配する方が多くいます。実際には、相続財産ではなく受け取る人固有の権利として扱われるものは、放棄しても受け取れます。この記事では受け取れるもの・受け取れないものと、それぞれの税金を整理します。
受け取れるものと受け取れないもの
| お金の種類 | 放棄後に受け取れるか | 理由 |
|---|---|---|
| 死亡保険金(受取人が自分) | 受け取れる | 受取人固有の財産 |
| 死亡保険金(受取人が「被相続人」) | 受け取れない | 相続財産になる |
| 死亡退職金 | 多くの場合受け取れる | 会社の規程で受給者が決まっていれば固有の権利 |
| 遺族年金 | 受け取れる | 遺族自身の権利 |
| 未支給年金 | 受け取れる | 一定の遺族の固有の権利 |
| 健康保険の葬祭費・埋葬料 | 受け取れる | 葬儀を行った人への給付 |
| 高額療養費の払戻し | 原則受け取れない | 被相続人の権利(相続財産) |
| 預金・不動産・車 | 受け取れない | 相続財産 |
放棄をした後に相続財産に当たるものを受け取って使うと、単純承認とみなされて放棄が無効になるおそれがあります。迷うものは手を付けずに専門家に確認してください。
それぞれの課税の扱い
死亡保険金は相続放棄をしても「みなし相続財産」として相続税の対象です。ただし放棄した人は「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を使えません。非課税枠を計算する人数には放棄者も含めますが、枠を使えるのは放棄していない相続人だけです。放棄した人が配偶者や子であれば2割加算はされません。
死亡退職金も同様に相続税の対象で、放棄者は非課税枠を使えません。
遺族年金は所得税も相続税も非課税です。
未支給年金は、亡くなった方が受け取るはずだった未払分を遺族が請求するもので、相続財産ではなく受け取った遺族の一時所得として所得税の対象になります。年50万円の特別控除があるため、少額なら実質的に課税されません。
葬祭費・埋葬料は非課税です。
申告が必要になるケース
放棄した人でも、受け取った保険金や退職金が多額なら相続税の申告が必要です。例えば法定相続人が子2人で、2人とも放棄し、長男が保険金5,000万円を受け取った場合、基礎控除は4,200万円(3,000万円+600万円×2人)で、非課税枠は使えないため、5,000万円−4,200万円=800万円が課税対象です。放棄をした人にも申告義務が生じうる点は見落とされがちなので、受け取った金額を確認して判断してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。