2024年から相続時精算課税にも年110万円の基礎控除ができ、「暦年の110万円と同じもの」と誤解されることが増えました。2つの110万円は別の枠で、性質も異なります。父は精算課税・母は暦年課税のように贈与者ごとに使い分ければ、両方の枠を同時に使えます。
2つの110万円の違い
| 暦年課税の110万円 | 精算課税の110万円 | |
|---|---|---|
| 誰からの贈与を合算するか | 暦年課税の贈与者全員の合計 | 精算課税を選んだ贈与者(特定贈与者)からの合計 |
| 相続時の持ち戻し | 相続開始前7年以内は110万円以下でも加算 | 110万円以下の部分は加算しない |
| 申告 | 110万円以下なら不要 | 110万円以下なら不要(初年度の届出書は必要) |
大きな違いは持ち戻しです。暦年贈与の110万円は「贈与税がかからない」だけで、相続開始前7年以内の分は相続財産に戻されます。精算課税の110万円以下の部分は相続財産に加算されず、記録上も相続財産から切り離されます。
併用の具体例
長男が父から精算課税、母から暦年課税で贈与を受けるケースです。
- 父から年110万円 → 精算課税の基礎控除内で贈与税0円。相続時の加算もなし
- 母から年110万円 → 暦年課税の基礎控除内で贈与税0円。母の相続開始前7年以内なら加算
合計で年220万円を無税で受け取れます。一方、父と祖父の2人から精算課税で贈与を受ける場合は、110万円を2人分に増やせるわけではなく、2人からの贈与額の比で110万円を按分します。
よくある誤り
- 父から精算課税で110万円、同じ父から暦年課税で110万円の「二重取り」はできません。精算課税を選んだ贈与者からの贈与はすべて精算課税です
- 精算課税を選んだ年に贈与が110万円以下でも、初年度は選択届出書の提出が必要です
- 110万円を超えた部分は2,500万円の特別控除に充てられ、贈与税は0円でも相続時に加算されます
生前対策では、相続までの期間と贈与者ごとの財産額を見て、どちらの制度を誰に使うかを設計することが重要です。相続税シミュレーションで相続税の概算を把握してから検討してください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。