生前贈与の持ち戻し(相続開始前7年以内の贈与の加算)は、「相続や遺贈で財産を取得した人」にだけ適用されます。相続人でない孫や子の配偶者への贈与は原則として加算されません。しかし、遺贈や生命保険金によって「財産を取得した人」になると、過去の贈与が加算対象に変わります。見落としやすい例外を解説します。
原則:相続人でない人への贈与は加算されない
加算の対象者は、相続または遺贈によって財産を取得した人です。子が健在であれば孫は相続人ではないため、孫への贈与は7年以内のものでも相続財産に戻されません。これが孫への贈与が生前対策として有効とされる理由です。子の配偶者(嫁・婿)、子がいる場合の兄弟姉妹、甥姪なども同様です。
加算対象に変わる3つの例外
例外1:遺言で財産を受け取る(遺贈)
孫に「〇〇の土地を遺贈する」という遺言があれば、孫は遺贈で財産を取得した人になり、相続開始前7年以内の贈与がすべて加算されます。遺言で少額の財産を残しただけでも対象になるため、贈与と遺言の設計は一緒に考える必要があります。
例外2:生命保険金や死亡退職金を受け取る
孫を死亡保険金の受取人にしていると、孫はみなし相続財産を取得した人として扱われ、過去の贈与が加算対象になります。「保険金は孫に、現金は生前贈与で」という組み合わせは、両方が相続税の対象になり、さらに孫は相続税の2割加算も受けます。
例外3:相続時精算課税を選んでいる
孫が祖父母からの贈与に相続時精算課税を選んでいる場合、その贈与財産(年110万円の基礎控除を超える部分)は相続時に加算されます。精算課税の受贈者は、相続財産を取得していなくても相続税の申告対象です。
加算対象になったときの影響の例
祖父が孫に毎年300万円を5年間贈与(合計1,500万円)し、孫を受取人とする保険金500万円を残していた場合
- 保険金500万円は孫のみなし相続財産(非課税枠は相続人でないため使えない)
- 過去の贈与のうち加算対象期間の分が相続財産に加算(3年超の部分は合計100万円控除後)
- 孫の相続税額は2割加算
贈与していた金額が大きいほど影響も大きくなります。
実務上の対応
- 孫への贈与を持ち戻しの対象外に保ちたいなら、遺言での遺贈や保険金の受取人指定をしない
- 遺言や保険で孫に残す予定があるなら、贈与は相続時精算課税の基礎控除内に収めるなど別の設計にする
- 相続放棄をした人は(保険金を受け取らなければ)加算対象外
贈与・遺言・保険は相互に影響します。全体を見て組み立てることが大切です。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。