自宅を一人が相続し、他の相続人にお金で精算する代償分割では、「一括で払う資金がない」という相談が多くあります。結論から言うと、代償金は分割払いにしても、利息を付けなくても、遺産分割協議書に明確に定めてあれば遺産分割の一部として扱われ、原則として贈与税の問題は生じません。ただし、書き方が曖昧だと後の支払いが「兄から妹への贈与」と見られるリスクがあります。
分割払い・無利息でも遺産分割として扱われる理由
代償金は、遺産を多く取得した相続人が他の相続人に負う「代償債務」です。相続税の計算では、支払う側は取得財産から代償債務を差し引き、受け取る側は代償金を加えて課税価格を出します。この扱いは、支払いが一括か分割かで変わりません。
無利息についても、代償債務はもともと遺産の清算であって金銭の貸し借りではないため、利息を付けない定めが直ちに贈与とされるわけではありません。一方で、支払期間が極端に長い場合や、支払いが途中で止まっても何も請求しない場合には、「代償金を受け取る権利の放棄=贈与」と判断される可能性があります。
協議書に必ず書く5つの要素
- 代償金の総額(例「金1,500万円」)
- 支払方法(開始月、毎月の額、回数、期日)
- 振込先と振込手数料の負担者
- 期限の利益の喪失(2回以上遅れたら残額を一括で支払う、など)
- 無利息とする旨
「乙は甲に対し、代償金として金1,500万円を、令和〇年〇月から毎月末日限り金25万円ずつ60回に分割して支払う。利息は付さない。」
「追って協議する」「資金ができ次第」という書き方は避けてください。額や時期が決まっていないと、遺産分割そのものが成立しているかが争われます。
相続税申告と実際の支払いをずらさない
申告書には協議書どおりの代償金額を記載します。申告後に「やはり払えないので減額した」とすると、減額分は受け取る側から支払う側への贈与と扱われるのが原則です。支払う側が相続した不動産を売って資金を作る予定なら、売却時期と分割回数を現実的に設計しておく必要があります。
代償金が多額になるときは、支払う側の資金計画を先に立ててから協議書の文言を固めるのが安全です。協議書の作成段階から税理士が関わると、申告書と協議書の金額のずれも防げます。無料相談で代償分割の設計についてもご相談いただけます。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。