配偶者居住権を遺産分割で設定する手順|合意事項・登記・相続税評価額の分け方

配偶者居住権は遺産分割協議で設定でき、存続期間や対象建物を協議書に明記して建物に登記します。相続税では居住権と敷地利用権を配偶者、負担付き所有権を子が取得したものとして評価を分け、小規模宅地等の特例はそれぞれに適用できます。

配偶者居住権は、遺言のほか、相続人全員の遺産分割協議でも設定できます。「母は自宅に住み続け、所有権は長男が持つ」という分け方を協議で実現する場合、協議書に何を書き、どう登記し、相続税の申告でどう評価を分けるかを整理します。

協議書に書く合意事項

配偶者居住権を遺産分割で設定するには、次の点を協議書に明記します。

  • 対象となる建物(所在・家屋番号)と、配偶者が相続開始時に居住していたこと
  • 存続期間(配偶者の終身、または「令和〇年〇月〇日まで」の確定期間)
  • 建物の所有権を取得する相続人
  • 敷地(土地)の所有権を取得する相続人
  • 修繕費・固定資産税などの負担の取り決め(任意)

「相続人乙(配偶者)は、下記建物について配偶者居住権(存続期間は乙の終身の間)を取得する。相続人甲は、同建物および敷地の所有権を取得する。」

存続期間は、一度定めると延長できません。終身とするのが一般的ですが、将来の施設入所を見込んで期間を区切ると評価額が下がり、相続税が減る場合があります。

登記

配偶者居住権は、建物に登記しなければ第三者に対抗できません。登記は配偶者と建物所有者の共同申請で、登録免許税は建物の固定資産税評価額の0.2%です。土地には登記しません。

相続税評価額の分け方

相続税では、自宅の評価額を4つに分けます。

取得者 財産
配偶者 配偶者居住権(建物部分)、敷地利用権(土地部分)
建物・土地の所有者 居住権の負担付き建物所有権、敷地所有権

計算の流れは、まず建物全体の評価額(固定資産税評価額)と土地全体の評価額(路線価方式等)を出し、そこから配偶者居住権と敷地利用権の価額を法定の算式(残存耐用年数・存続年数・法定利率による複利現価率を使用)で計算し、残りを所有権部分とします。

例えば土地の評価額4,000万円で、敷地利用権が1,200万円と計算されれば、長男の敷地所有権は2,800万円です。配偶者の取得分1,200万円には配偶者の税額軽減が、要件を満たせば敷地利用権と敷地所有権の両方に小規模宅地等の特例が、面積按分で適用できます。

注意点

  • 配偶者が亡くなると居住権は消滅し、長男の所有権は完全なものになりますが、このとき相続税はかかりません(二次相続の節税効果)
  • 配偶者が存続期間の途中で居住権を放棄し、長男が対価を払わない場合、配偶者から長男への贈与と扱われます

評価の計算は専門的で、存続期間の設定次第で税額が変わるため、協議書を固める前に税理士の試算を受けることをおすすめします。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。

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