親の介護を長年担った人が、相続で何も報われないのは不公平だという声は多くあります。民法には、相続人の貢献を評価する「寄与分」と、相続人以外の親族の貢献を評価する「特別寄与料」の2つの制度があります。どちらも自動的に認められるものではなく、手続きと期限があり、受け取ったときの相続税の扱いも異なります。
寄与分の請求(相続人の場合)
寄与分は、被相続人の財産の維持や増加に「特別の寄与」をした相続人に認められます。通常の扶養の範囲を超える介護、無報酬での家業の手伝い、事業資金の提供などが典型です。
手続きは、まず遺産分割協議の中で主張します。他の相続人が認めれば、協議書に「甲の寄与分を500万円とする」と記載し、その分を先に甲に渡してから残りを分けます。合意できなければ、家庭裁判所に寄与分を定める調停・審判を申し立てます。期限はありませんが、遺産分割が終わってから単独で請求することはできません。
特別寄与料の請求(相続人以外の親族の場合)
2019年7月から、相続人ではない親族(長男の妻、孫、兄弟姉妹など)が無償で療養看護などの労務を提供し、財産の維持・増加に特別の寄与をした場合、相続人に対して特別寄与料を請求できるようになりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 請求できる人 | 相続人以外の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族) |
| 対象となる貢献 | 無償の労務提供(療養看護・家業の手伝い)。金銭の援助は対象外 |
| 請求先 | 相続人(複数なら法定相続分に応じて負担) |
| 期限 | 相続開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年のいずれか早い方 |
まず相続人と協議し、まとまらなければ家庭裁判所に調停・審判を申し立てます。この期限は短く、過ぎると請求できなくなるため、介護をしていた親族は相続開始後すぐに動く必要があります。
相続税の扱いの違い
寄与分を受け取った相続人は、その分を含めて相続により財産を取得したものとして申告します。相続人なので、2割加算は配偶者・一親等の血族であれば対象外です。
特別寄与料を受け取った親族は、被相続人から遺贈により取得したものとみなされ、相続税の申告が必要です。相続人以外なので2割加算の対象となり、基礎控除の人数にも入りません。支払った相続人は、支払額を債務控除として課税価格から差し引けます。特別寄与料の額が確定したのが申告期限後なら、受け取った側は確定を知った日の翌日から10か月以内に申告し、支払った側は4か月以内に更正の請求を行います。
介護の記録(日記、領収書、介護サービスの利用明細)を残しておくことが、どちらの制度でも主張の裏付けになります。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務判断ではありません。実際の取り扱いは財産の内容や分割の仕方によって変わります。